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フィフニルの妖精達35「閑話・Beastly Aggression」

 ※この話には若干の排泄的表現が含まれます。


 ――グリン・グラウル・グランワルトがそれに気付かなかったのは無理もない。
「――ふぇ?」
 長く我慢していたお花探し――下腹部に溜まったものの排泄を済ませようと、ふたりの仲間から適当な距離を離れ、ようやく落ち着ける茂みの中を見つけて腰を下ろしたところだったのだから。
 わたわたと下の服を脱ぎ、毛の一本もない股間を夜の森の外気に露出させて草葉の陰にしゃがみ込み、はあ、と安堵の息を吐いた矢先のこと。
 がさり、と茂みを揺らす音に気付いて後ろを振り向いた瞬間、グリンはあまりにも強烈な力で地面へと押し倒された。
「あ、ぶっ!?」
 土の地面とは言え、頭を掴まれて叩き付けられた結果、激しい鈍痛と共に意識が遠のく。
 いっそ、そこで気絶してしまっていれば楽だったのかも知れない。
 しかし僅かに張られていた妖精炎の防護膜が、グリンを衝撃から完全に護るほどでもなく、しかし気絶してしまわないようにと護ってしまった。
「あ、う……? ――い、ぎっ!?」
 次に襲ってきたのは、耐え難い激痛。
 一気に意識を取り戻したグリンが見たものは、恐ろしいほどに凶悪な牙の連なりが自分の右の二の腕を噛み、滅茶苦茶にしてしまっている光景だった。
 こういった不測の奇襲に対するお決まりの対抗手段は幾つかある。
 最も一般的と言われるのが、まず妖精炎魔法で痛覚を切り、拘束されていればそれを解くか、あるいは拘束されている部位を自切して逃れ、魔力啜りなどの妖精や精霊種の天敵と言える攻撃を受けるより早く衝撃系の攻撃で反撃し、距離を取ることだ。
 グリンが取ることが出来たのは、痛覚のおおよそ半分を切ることまでだった。
 滅茶苦茶になって血が噴き出ている二の腕を、牙の連なりの内側で、ぞぶり、と生暖かいものが舐めた。
 瞬間――
「ひっ!? あっ、や、やめ――!?」
 自分の中身が根こそぎ吸い取られる、吐き気を催す感覚。
 それが全身を駆け巡ったと同時に、彼女の妖精炎はその殆どが消え失せてしまった。
 強烈な魔力啜り。魔力とはやや性質が異なる妖精炎を一瞬で徹底的に吸い尽くせるということは、今自分の背中に圧し掛っているのは、妖精種の天敵――
「っ、ひ……」
 脳がそれを理解した瞬間、グリンの身体は恐怖に固まり、それ以上の行動が出来なくなってしまった。
 無駄に等しいというのに、自分を護っている最低限の防護膜と、半分ほど遮断できた痛覚を必死に維持するのみ。
 長い耳に、ぐるるる、という獣声が響く。
「やめ、やめて、たすけてです……!」
 命乞いの言葉が口から流れ出す。通じるわけがないと半ば分かっているのに止まらない。
 勿論そんな哀願に構うことなく、牙の獣はグリンの鮮血をざらざらとした舌で味わっていた。ずたずたになった肉が舐められる度、引き攣った痛みがグリンの全身を襲う。
「やだ、やだ、なんでもしますから、おねがいですから……! う、ぎゅうっ!?」
 喚くように命乞いを続けていたグリンに対し、牙の獣は煩いとばかりに彼女の背中を押さえ付けている前足に力を込めた。グリンの頭が土に押し付けられ、背骨が折れそうになって呼吸が詰まる。それによって命乞いの声が止まると、それでいいとばかりに前足の力が緩んだ。
「あ、ひ……」
 声を出すことを封じられて、かたかたとグリンの身体が小刻みに震える。
 獣の息遣いと、自分の血が美味しそうに啜られる音だけが彼女の耳に響く。
 ああ、自分はここで生きながら食べられて死ぬのだ。その思いが彼女の心の中を溶かすように満たした。
「う、う…… ごめんな、さい……」
 そうだ。これはきっと、かつての罪の応酬なのだ。
 視線を向ける。牙の獣はクフィウル似ではあったがあり得ないほどに巨大で、闇よりも暗い黒色を纏っているように見えた。それは、かつて彼女と彼女の親友が産み出した罪の色。
 その罪が、逃げ出した自分を追って、ようやく今やってきたのだろう。
 なら、少しでも楽に。
 ごめんなさい、ライ。フェイ。色々と迷惑を掛けました。私はここで食べられます。
 身体の力を抜いて、グリンは背後の獣の暴力に自分の命を委ねた。
 それを察したのか、あるいは血を十分に味わったからか、獣が身動ぎをする気配があった。
 けれど、それもどうでもいいこと。せめて一思いに食べて欲しいと、先程までとは真逆のことをグリンは獣に願った。
 しかし獣は、ゆっくりとグリンの右腕から牙を放す。
 あれ、とグリンが思考の放棄を始めた頭で疑問に思った瞬間、まるでグリンをそう容易くは許さぬとばかりに、それは始まった。
「え……?」
 熱を持ったものが、さらけ出していた自分の排泄の穴に押し当てられる感触。
 まさか、とグリンの脳裏に過ぎるのは、触手を持って妖精や精霊の口内や排泄穴から体内に侵入し、内臓や排泄物を貪り食ったり、生かしたまま苗床にして繁殖する生物のこと。
 けれど、この獣はクフィウル似の――
「っ、やっ、あ、ひっ、だめ、むりです……!」
 この形態の獣はそういう生態は持たないはず、と自分の知識は教えてくれているのに、容赦のない侵入が始まった。
 みちみちみち、と肛肉を押し広げ、獣のその巨大な体躯に見合った肉の器官がグリンの直腸を侵略してくる。
「ひ、あ、だめ、だめ、あ、あ、あ……!」
 窄まりの皺を限界まで押し広げてなお、有り余る太さがある肉の器官。
 当然、入り切るものではない。ぶちりと鈍い音がして、鮮血がとろりと縦筋の方へと流れ落ちる。
 あまりの暴虐に、我慢していたものが縦筋から水音を立てて零れ出す。暖かい淡黄色の液体が血と混じり合って太股を濡らしていくが、それを気に掛けている余裕などない。
「あ、は、う……」
 筋が千切れたせいか、獣の器官が腸内に入ってくる速度が僅かに上がる。痛覚の半分を切っているお陰でそれほどの痛みではないが、逆に体内に挿入された肉の固まりの存在感がありありと分かって、グリンは熱く重い吐息を漏らした。
 お腹が熱い。重い。お尻の穴が開きっぱなしで、力を入れても閉じれない。排泄を途中で止めているような恥ずかしさもある。
 痛みはあるが、それ以上に奇妙な感覚だった。過去、苗床にされたり内臓を喰われて死んだ人達はこんな感覚を死ぬまで味わったのだろうか――グリンは少しだけ、どうせなら普通に食べて欲しかったと思いながら、また自ら思考力を鈍らせる。
 この後のことなんて考えたくはない。どうせやってくるのは腹を破裂させんばかりの産卵行為か、あるいは内臓を貪り喰われるかのどちらかだ。
 そんなグリンの思考を他所に、獣は満足そうにひとつ呼吸をすると、より強く彼女へと圧し掛った。
「う、あう……」
 獣の器官が内臓を押し上げる。ぼこりと腹が歪に膨らむ感覚に、グリンは吐き気を堪える。
 ついに死の瞬間が来るのだろうかと、グリンは瞼を閉じた。
 しかし次に来たのはまたも逆。獣はグリンの両肩を押さえると、ゆっくりと肉の器官を引き抜きに掛かった。
「あ、やっ、なんで、です……? あ、ううっ……」
 ずるずると腸内から抜かれていく器官。今までに体験したことがないほどの排泄の感覚を味合わされて、より強い恥ずかしさに頬を染めつつ鳥肌を立てながらグリンは戸惑う。
 先程の牙といい、この肉の器官といい、この獣は一体どういう――
 つもりなのか、と考えようとした瞬間、ずんっ、とお腹に響いた衝撃で、グリンは肺の中の息を纏めて吐き出した。
「あ、ぐっ!?」
 衝撃の正体は、獣がまたその器官をグリンの腸内の奥深くまで突き込んだことによるものだ。
 腹が一瞬でみちりと満たされる感覚に、グリンの脳は混乱する。その混乱が覚める前に、獣はまた肉の器官をグリンの腸内から引き抜きに掛かった。
「あ、あああっ……!」
 強制的な排泄の感覚に、グリンはつい声を漏らす。
 痛みがそれほど気にならないだけに、そんな余計な感覚だけが身体を走る。
 そちらを切ろうにも、残った妖精炎では手が回らないし、第一切ったことがないので切り方が――
「ひうっ!?」
 またずちりと突き込まれて、息苦しさにグリンは舌を出しながら呼吸に喘ぐ。
「あうううっ……!」
 そしてまたずるりと引き抜かれる。徐々に早くなる往復の速度に、グリンは肌を粟立たせながらも必死で耐えながら、ふと考えてしまう。
 一体この獣は何をしたいのか。排泄器官にこんな破壊的な器官を打ち込んでおいて、すぐに産卵に掛かる訳でもなく、内臓を喰い荒らすわけでもない。前後運動で身体は軋んではいるけれど、決定的に壊れるほどでもない。
 もしかして、この獣は――
「あっ、うっ、ひっ、ぐっ、あっ、ひっ……!」
 ずち、ぬち、ぐち、ずる、と前後運動が本格的に速度を増す。
 鈍痛と共に排泄感も加速して、顔を真っ赤にしつつ身体を震わせながら、ただひたすらに耐える。
 自分を食べるのか食べないのか、どちらなのかはっきりして欲しいとグリンが苛立ちさえ思い始めた頃、それは来た。
 獣がびくりと震え、一際強くグリンに圧し掛る。
 腸内の奥深くまで侵入した肉の器官が、僅かに膨らむのを感じる。
「っ……!」
 今度こそついに来た、とグリンは身体を強張らせる。
 それに応えるように、彼女のお腹の奥で爆発するかのごとく、肉の器官の先端から獣の体液が噴き出した。
「あ、ひっ、あつ……! あ、ああっ……!」
 その熱にまず怯んだグリンは、次いでその量に身体を震わせた。
 自分の体温と同じぐらいの熱を持った重い液体が、あっという間に自分のお腹の中を満たしていくのが分かる。
「う、ふ、うえぇ……!」
 下腹が地面に接するほどまでに膨れ上がる。排泄口が他ならぬ獣の器官で完全に塞がれているため、容量の少ない腹を一杯に満たしてやろうとばかりに逆流してくる。
 喉まで迫り上がってくるような感覚に吐き気を催しながらも、ぶち撒けるのだけは何とか堪えることが出来た。
「あ、うう……」
 これが産卵――苗床にされるということなのだろうか。ならば苗床産卵をする獣の殆どがそうであるように、このまま昏睡させられるか、あるいは一切の身動きが出来ないよう手足を千切られるのだろうか。
 しかし、獣にその動きはなく――逆に、やや慌てるような動きでグリンの腸内から肉の器官を抜きに掛かった。
「え、えっ、あ、だめ、あっ、でちゃ――」
 その動きに気付いたグリンが戸惑いながら下腹部の衝動に従って獣に制止を促す。だが、勿論と言うべきか獣は止まらず――
「あっ、ひっ、あ、あ、やあああぁっ……!」
 肉の器官が抜け落ち、閉じようにも筋が断裂したせいでだらしなく開き切ったままのグリンの肛門から、噴水のように獣の体液が噴き出した。
「やっ、あっ、だめ、だめです……!」
 お腹の中に出された獣の体液が噴き出ていることは喜ぶべきことだったが、それ以上に、止まらない大量排泄の感覚にグリンは焼き焦がされるような羞恥を感じて身悶えた。
 実際、噴き出ている体液の中にはグリン自身のお腹の中に溜まっていた汚いものも混じっているのだろう。時々肛門を通過していく固形物の感覚が、彼女には溜まらなく恥ずかしかった。
「う、うう…… あ、れ……?」
 噴水がようやく落ち着くと、グリンは先程までとは毛色の違う――恥ずかしさと悔しさが入り混じった呻きを上げ、ふと、あることに気付いた。
 それは先程まで背中に圧し掛かってきていたはずの、圧倒的な暴力の有無。
「う…… どう、して……?」
 疑問を呟きながら、グリンは何とか身を起こして後ろを振り向く。
 そこにいたのはやはり、クフィウル似の巨大な黒い獣。
 黒い獣は、己を呆けた視線で見るグリンに何をしようという様子でもなく、先程までの暴虐さが嘘のように、ただ大人しく少し離れた場所に座り込んでいた。
 その黒水晶のような瞳が放つ視線の先には、グリンと、彼女と獣の間に広がる白い池。
「あ、う……」
 獣の視線がどことなく残念そうな、気落ちをしているような色を帯びているのを見て、グリンは気まずさに襲われる。
 この白い液体が獣にとって産卵に近い行為であったのだとすれば、自分はその殆どをぶち撒け、台無しにしてしまったのだ。
「あ、あの、その……」
 そのあまりの落ち込みの色が見える視線に、自分が何かを言うべきである気がしてグリンは口を開く。しかし意味のある言葉は出てこない。そもそも何を言うべきなのか。ごめんなさい、は襲われた立場であるからして違う気がするし、さりとて怒るのも何か違う気がする。いやそもそも、こんな獣相手に言葉が通じるわけが――
「あ……」
 そんなことを考えている間に、黒い獣は回れ右をしてとぼとぼと去っていった。
 呆然とするグリン。そして獣の後ろ姿が闇の中に消えていって、ふと気付いたように彼女は呟いた。
「生きてる、です……」
 右上腕は噛み砕かれたままだけれど、癒せば問題ない。妖精炎も吸い尽くされはしたが、核が生きているから回復に向かっている。お腹は痛いしまだ獣の体液が溜まっているが、それ以上は何ともない。お尻も切れているが、これも癒せる。
「生きてる、です」
「――グリン? そこにいるの?」
 再び、今度は確かに口にした瞬間、遠くから茂みを掻き分ける音と共に声が響く。
 グリンにとっては同僚であり友人であるライ・ゴルディス・アンカフェットの声だった。花探しに行っただけにしてはなかなか戻らないグリンを探しに来たのだろう。
「あ、はい――」
 返事をしようとして、グリンは自分の残状に気付く。
「も、もうちょっと待ってください! すぐに――」
 そして妖精炎魔法を使おうとして、そのことにも気付いた。
 自分の妖精炎が今までの生でかつて感じたことのないほどの勢いで満ちていき、あっという間に自分の限界だったはずの量を超えていくのを。
「な…… なんです、これ……」
「――グリン? 大丈夫?」
「――す、すぐに行きますです! ですからもうちょっとだけ!」
 とにかく返事を返し、満ち満ちている妖精炎で慌てて右腕を癒し、次いでお尻とお腹の中も癒す。鈍痛が消えると、あとは獣の白い体液が体内にまだ多量に残留しているせいか渋り腹となっているお腹ぐらいのものだ。
「う…… んんっ」
 まだそれなりに膨らんでいるお腹を複雑な視線で見つめ、少し悩んでから、ごめんなさい、と心の中で謝ったグリンは、懸命にお腹を擦って、残った獣の体液をその場にひり出した。
 そうして身を整えて急いでその場を離れようとして、ふと足元の白い液体の池と自分の身体を――満ち満ちている妖精炎を交互に見遣る。
「もしかして……」
 ひとつの可能性を考えながら、グリンは黒い獣が消えていった方向に視線を向けた。

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