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神官少女の淫欲

「――っ、あっ……!」
 押し殺した官能の声が、静かな闇の中に響く。
 同時に聞こえるのは、僅かな水音と、ゆっくりと風を薙ぐような羽音。
「は、あ、あ……!」
 声の主は、純白の翼を持つ翼人の少女――フェルナ。
 その小柄な身に纏ったままの空と海の神の青い神官服が、彼女の身を証明している。
「あ、う…… っ、や、あぁ……!」
 ベッドに腰掛け、その長衣の裾を膝上まで引き上げ、華奢な両足を上げ開いて、その奥に両の手を入れて。
 背中の羽を落ち着かないようにゆらりゆらりと動かし、青のグラデーションが掛かった髪を揺らしながら、一心不乱に没頭していた。
 何を、とは言うまでもない。
「ふ、うっ、あ……! きもち、いい、よう……!」
 衝動のままに言葉を吐きながら、どうしてこんなことに、と自問するフェルナ。

 事の起こりは、おそらくは数時間前に遡る。

「――危ない!」
「え――きゃあっ!?」
 ぼふりと。縫いぐるみを投げ付けられたような衝撃がフェルナの脳天に走ると同時、凄まじい量の粉末がその顔面を包んだ。
「な、これ……けほっ、けほっ、ごほっ!」
「大丈夫か!?」
 先程警告を発してくれた仲間の問いに、フェルナはあまりの煙たさに涙目になりながらも何とかそう答えた。
 足元を見る。転がっているのは毒々しい赤色の小さな茸。それを幾許かの怒りと共にブーツの踵で踏み潰して、フェルナは正面を睨む。
 視線の先にはもはやボロ屑となった茸の化物が一体。既に僅かたりとも動く気配はなく、濁った瞳は虚ろに空を見上げている。
「すまん。もう死んだかと思っていたんだが」
「いえ。大丈夫です、これぐらい……けほっ」
「変な毒があったら大変だよ。今日はこれでもう終わりだし、治癒しといた方がいい」
「ありがとうございます…… それではお言葉に甘えて『神よ、お力を』」
 力ある言葉と共に、尾羽根の姿をした光がフェルナの頭上に一瞬だけ現れ、光の羽毛を散らす。
「これで大丈夫だと思います」
「そりゃよかった。じゃ、戻るとするかね」
「はい」
「あいよー」
「うん」
 パーティメンバーそれぞれの声を聞き、移動を始める彼らに付き従ってフェルナもその場を去り、しばしの拠点としている村へと戻った。
 そして夕食を終えて、数時間後。
 フェルナは不意に、自分の身体がどうしようもないほどに快楽を求め出しているのを感じた。
 最初は軽い動悸と共に身体が火照り出し。
 次に、男性を目にするとどうしようもなく淫らな気分になり。
 やがて、股間から恥ずかしい液体が絶え間なく溢れ始めた。
 当然、睡眠までに思い思いの時間を過ごしていた仲間達と一緒にいることなど出来ず、逃げるように部屋へと引き篭もったはいいが、どうしようもなくなって、ついには慣れない指先で一心不乱に己を慰めることになったのだ。

 ――あの時の胞子。あれに、変な効能が。治癒できてなかったんだ。
 そう思うも、もはや官能に蕩けた少女の幼い頭では短い呪文の一節さえ唱えることは出来なかった。
「あっ、ひっ、あ、やっ、いい、いいのっ」
 無毛の縦筋を割開き、衝動のまま無遠慮に指でまさぐる。男を知らないせいで未だ膜の張った処女穴は浅く撫で回すことしか出来ないが、その上にある淫核から得られる快感はその物足りなさを補ってくれる。
 とはいえ、胎内に男のものが欲しくてたまらないのも確かだった。見たことすらないはずの男根がフェルナのそこに宛てがわれ、一息に貫く。それを想像しただけで身体は震え、更に淫らな液体を溢れ零した。
「っ、あぁ……! はっ、あ、ほしいの、おとこのひとのっ……!」
 自分で言って、自分で宥めるように股間を弄る。
 時間が経てば経つほどに。快楽を得れば得るほどに。絶頂に達すれば達するほどに、衝動は強くなった。
 もうこの際何でもいい。胎内を満たしてくれるものなら。そう思い初めていた。
 視線が部屋の中をさ迷う。何かないか。指よりも長くて、太くて――
「……あ」
 視線に止まったのは、自分の荷物袋の中から覗く魔晶石の細長い容れ物。指三つほどの太さで、長さもそれなりにある。
 フェルナはほとんど何も考えられずに、ふらふらとそれを手に取った。そして股間、すっかり濡れそぼった縦筋の中にある小さな穴へと宛てがう。
「う…… ほしい、のに……」
 先程から小時間とはいえ散々弄って少しは緩んだそこに浅くめり込んで押し広げようとする異物。
 だが、それ以上が進まない。挿入してしまえば取り返しの付かないことになると、フェルナに残された最後の理性が必死に抵抗を試みていた。
 勿論、それで欲求が消えていくわけではない。淫らな衝動は胎内を満たすことを望んでいる。
 僅かな逡巡の末、フェルナは手の中の異物を押し当てる場所を変えた。すなわち、後ろの窄まりへと。
 耳に挟んだことがあった。こちらでも気持ちよくはなれるのだと。ならばこちらでもいいはずだと。
 不浄の場所であるとか、普通ではないといった観念は吹き飛んでいた。ただ欲求を早く満たしたくて、フェルナは異物を自身の尻穴に挿入し始めた。
「あ、あっっ……! うあああっ……!」
 自分の身体の中に異物が入り込んでくる、という初めての経験は、毒のせいか予想以上に甘美なものだった。
 身体の中心から流れてくる激しい熱を伴う快感に、フェルナは舌を突き出して涎と脂汗を流しながら、背中の羽と一緒に身悶える。
「あ、うっ、おしり、すごいよぅ……! あっ、ああっ、あっあっっ」
 思わず呟いて、尻穴で咥え込んだ異物をそのままに、また一心不乱に縦筋を弄りだすフェルナ。
 とろとろと溢れる愛液をくちゅくちゅとかき回しながら、あっという間に絶頂へ上り詰めていく。
「ふあああぁっ」
 背を少しだけ反らし、尻穴に咥えた異物をぎちりと締め付けて、臆面もなく声を上げる。
 そこには確かに、幼い神官少女の淫らな笑みがあった。
 そしてその嬌声と水音と羽音は、夜が更けるまで続いたという。

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