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Repulsive Magic

※いわゆるガチでスカトロ(大)なお話です。
耐性のある方以外は閲覧を避けることをこの上なく推奨します。
また耐性があると思っていた方でも、これは無理だと思った時点で閲覧をお止め下さい。








 暗い闇の中で、すぅ、と強く息を吸う音がした。
「――いいですか?」
 ついで小さく響いたのは、年若い男の――少年の声。落ち着きはあったが、声質から相当年若いことが窺い知れた。まだ確実に二十は越していないだろう。
 その少年の問い掛ける声に応える声はなく、ただ空気だけが小さく動いた。
「セー」
 再び少年の声が響く。何かを確認するような声で、短く音を紡ぐ。
 その音の意味するところは、数字の三。
「トゥ」
 また響く。暗闇の中、その声は僅かに反響して、何処から聞こえているのかまるで分からない。
「オン」
 四度目の声。同時に、濃い闇の中で動くものがあった。
 それは光のない闇の中でもはっきりと分かる――更に濃い闇。
 その闇の中から、金の粒子が零れ出た瞬間、近くの暗い闇が爆発した。
「――ギイッ!?」
 人ならぬ者の驚きの声が幾つも響く。
 無理もないことだろう。光ひとつなかったその場所に、唐突に眩い光が生まれ、そして弾けたのだから。
 視界が焼かれ、激しく明滅する。まともに物を見ることが出来ない状態の中、眩い光に最も近かった人ならぬ者は己の得物を手の内で確かめ、
 瞬間、その頭を二振りの刃で貫かれた。
 悲鳴を上げることすら出来ずに人ならぬ者が倒れる。同胞の命が絶えた気配にその周囲の人ならぬ者が動揺と恐怖に包まれるが、襲撃者の凶刃がすぐそこまで迫っていると分かっていても彼らには為す術がない。
 二度、三度。刃が肉を貫く音が響く。最も被害の少なかった人ならぬ者が辛うじて視界を回復し、腰にぶら下げていた粗末な棍棒をその手に構え、闇の中、襲撃者の姿を確認しようと目を凝らし、
「後ろだ」
 瞬間、耳元に響いた同胞の声に咄嗟に背後へと棍棒を振り回し、
「間抜けめ」
 同じように、刃で頭を貫かれた。
 
 
 闇の中に静寂が戻る。
 血生臭い匂いが立ち込める中、その匂いを撒き散らす原因となった濃い闇と金の粒子が、その手の二振りの刃にべっとりと付着したどす黒い血を布で拭っていた。
 そこへ闇から滲み出すように薄紅色の光源が現れ、その手元を照らす。
「明かりぐらい点けましょうよ。終わったんですし」
 薄紅色の光源――奇妙な紅色の炎を掲げるのは、白い骨の手だった。
 その闇に映える白を辿ると、やがて肘関節の辺りでどす黒い肉の断面が見え、そこから健康的な人間の肌が代わりに続き、やがて白い包帯へと変わる。
 それを更に辿れば、年若い男の――少年の顔が見えた。温和で、気弱そうな顔。そこに心配そうな表情を浮かべて、骨の手で明かりを差し出している。反対側の手には、人間のものと思しき頭蓋骨を幾つもぶら下げた杖を持っている。服はその禍々しい杖に相応しい闇色の魔道装束――だったのだろう。今は襤褸と言っても差し支えないほどに損傷し、その穴から真新しい包帯の白が覗いている。
「ああ――済まないな。見えるものだから、つい」
 少年の声に答えたのは、濃い闇に金色の粒子――ではない。正確には、濃い闇色の豪奢な衣装に身を包む、金色の髪を備えた年若い女――少女だった。
 濃い闇色の革手袋で包んだ細い手に二振りの黒いスティレットをまとめて持ち、もう片方の手で灰色の襤褸布を持って、それで刃を綺麗にしている。細い手を辿ると、それは手首の辺りから早くも濃い闇色をした厚手のクロークのような衣装に包まれる。そのまま華奢な肩のラインをなぞっていくと、細い首に倒錯的に映える黒革の首輪が見当たり、その上に声相応の若々しい綺麗な顔があった。
 形の整った眉に、強い意志を持った深い藍色の瞳。顔の造形はよく出来た人形のようで、その闇色の服を豪奢なドレスに変えれば、どこぞの小国の姫君と言っても通用するだろう。
 そんな少女は、スティレットの手入れを終えるとその二振りを腰の両側に提げた鞘に戻し、可愛らしく伸びをしてひとつ息を吐いた。
「しかし、こいつらの屍骸から治療法が見付かるかも知れないと思うと、複雑な気分だ」
「それが屍術というものですから。 ……お腹、大丈夫です?」
「まだ問題ない」
 少年の気遣いの言葉に、少女は少し視線を逸らしてそっけなく答える。
 その様子に少年は不安げな表情を浮かべ、ひとつ息を飲むと少女に一歩歩み寄って告げた。
「お腹、見せてください」
「問題ないと言ってるだろう」
「あなたは必要以上に我慢する癖がありますから、心配です。見せてください」
 やや語気を強めた少女の返答に、少年も強気で返す。少年の綺麗な黒曜石の瞳に映るのは、赤みが差した顔で苦々しく少年を睨み付ける少女の顔。その視線に声が震えそうになるが、彼女のためでもあると少年は更に語気を強めようと息を吸う。
 だが、それを遮る複雑ように少女が口を開いた。
「――分かった。見る、だけだからな」
 投げやりな調子で吐かれた言葉に、それでも少年は安堵する。
 少女の気持ちが分からないわけではない。だが事は生命と少女の今後の人生に関わる。
「ありがとうございます」
「礼を言うな。私の気持ちも察して欲しい」
 視線を逸らして言いながら、少女はその闇色の衣装の裾を掴み、捲り上げた。
 無骨な編み上げブーツの上、細く綺麗な足が徐々に薄紅色の光の中で露になる。太股の半分が少年の視界に入ったところで少女は一度躊躇するように手を止め、ぎり、と歯軋りの音を立てながらそれ以上を捲り上げた。
 光に照らされて薄紅色に見える、純白のシンプルな下着が露になる。そしてその上――ぽこりと膨れ上がった腹に描かれた、精密な黒色の魔法陣も。
 見れば見るほどに何故か生理的な嫌悪感を掻き立てられる魔法陣だった。少女の染みひとつない綺麗な腹を画布として描かれたそれは、その線の細さや複雑さから機能美を覚えそうなものなのに、しかし伝わってくるのはこれ以上はないというほどの悪意と悪寒。
 少年はそれを見て眉を歪め、薄紅色の炎を灯した骨の手でゆっくりと触れた。
「かなり張ってますね」
「っ……」
「出した方がいいんじゃないでしょうか」
「見るだけだと、言ったのに」
「治療を受け持った以上はその時々で適切な判断をするのが僕の役目です」
「まだ大丈夫だと――」
 少女の言葉を遮るように、その膨れた腹から、ぎゅるり、と苦しげな音が小さく響いた。
 ほぼ同時に、そこに描かれた魔法陣が妖しい黒色の光をその線に巡らせる。途端、少女はその端整な顔を苦しげに歪め、がくりと膝を付いた。
「ふ、うっ……!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「っ、だい、じょう――」
 少女の明らかな痩せ我慢を嘲笑うように、ぎゅるるるる、と凄まじい音がした。
 少年は気まずさ故に咄嗟に視線を逸らし、その行為によって少女の顔は可哀想なぐらいに朱色に染まった。
「だ、出しましょう。大丈夫です。変だなんて思いませんから」
「そういう、言葉が、余計だと…… くうっ」
 少女はよろよろと腰を上げ、近くの岩壁に片手を付いた。そしてもう片方で服の裾を掴み、ややあって観念したかのように捲り上げる。
 太股の内側が露になり、次いで純白の下着に包まれた、小振りだが形のいい尻も薄紅色の光に照らされる。
 だが、正面から見た時とは明らかに奇妙な箇所があった。それは、少女のその尻の谷間中央、下着の下にある歪な膨らみ。
「下ろします、ね」
「く、っ、あ、は、早く、やってくれ……!」
 骨の手で少年がその下着を引き摺り下ろすと、その下にあった異物が露になる。
 灰色の無骨な無機物。少女の尻肉の谷間から突き出たそれは、少女の尻穴を限界まで広げて、その半分以上をその中に埋め込んでいる。誰が見ても間違いなく、その異物は栓の役割を果たしていた。
 少年がその肛門栓に手を掛ける。その感覚が伝わったのか、少女はびくりと身を震わせた。
「抜きます」
「っ……!」
 少年が肛門栓の留め金を外すと、ぱちりという音ともに少女の尻穴を広げていた部分が僅かにその直径を減ずる。そして肛門栓を引くと、ぬちぬちぬち、という肉音と共に少女の尻穴からその腸壁を僅かに巻き込みながら灰色の怒張が抜けていく。
「う、あ、ああぁ……!」
 少女の悲鳴が闇の中に零れる。拳ふたつ分ほど怒張が抜けると、ぬち、と最後にひとつ音を立てて少女の尻穴は怒張から解放された。
 同時、下劣な音が洞窟内に響き渡る。
「っ、あ……!」
 まるで滝のように、少女の尻穴から茶色の汚物がひり出されていく。軟便と液状便の混合物は瞬く間に少女の背後ととの足の間に小山を作り、更に大きくなっていく。
 程なくして漂う、むせ返るような激臭。腐ったものを食べ続けてもここまでの臭いにはならないだろうというほどの悪臭。
 その音を聞き、臭いを鼻にして、それらを他ならぬ自分が発しているという事実。それによる恥ずかしさと、戦闘の前から感じていた強い便意からの解放に少女は震えながら涙を流した。何度経験しても慣れることのない醜悪な瞬間。まるで自分という人間性の全てを否定されているような、今すぐに自分の首を締めて死にたくなるほどの自己嫌悪。
 脳裏にあの地獄の日々が蘇る。人間であることを否定され、邪悪な死霊術師の作った屍餓鬼の腹を満たすためにただ糞便製造機として鎖に繋がれていた時間。液状の流動食を機械的に腹の中へと押し込まれ、それによって生まれた糞便を腹の魔法陣で増殖、腐食化させ、全く締まらなくなった肛門から土砂のように吐き出す毎日。
「う、あ……!」
 あの頃から何も変わっていない。
 あの忌まわしい日々から、まだ私は解放されていない。
 そう恨めしく思いながら、少女はいまだに滝のように尻穴から汚物を吐き出し続けた。
 桶に汲んだとして二杯か三杯分は排泄しただろうか。しかしまだ少女の腹は膨らんだまま、そこに描かれた魔法陣が妖しい光を放ち続けている。
 むりゅむりゅむりゅむりゅ、びちびちびちびちびち、とその脱糞の勢いは衰える様子がない。
 しかし少年はそれに驚くこともなく、ただ少女の異常な排泄行為を視界の端に収め続けた。


「っ、はぁ、はぁ、っあ……! ふ、あうっ……!」
 凄まじい脱糞をおよそ数分続け、少女の尻穴はようやく汚物を吐き出すことを一時止めた。
 少女の後ろでは激しい噴出の痕を示すように茶色い飛沫と小さい汚物の塊が辺りの岩壁や地面に付着し、足の間には少女の膝ほどの高さがある糞の山が形成されている。
 それほどの惨状を作り上げたにも関わらず、少女のぽかりと直腸を覗かせる尻穴は時折思い出したかのように軟便をみちみちみち、と吐き出す。
 しかしその甲斐あってか、少女の腹はすらりとした形状に治まり、その魔法陣の輝きも消え失せていた。
 少年は何も言わず、頃合を見計らって手にしていた肛門栓を少女の尻に挿入する。
「あっ、あ、ああぁ……!」
 あまりの排泄行為に敏感になっているのか、尻穴を満たしていく無機物に官能の声を上げる少女。
 少年はそれを無視しようとするかのように瞼を強く閉じながら肛門栓を最後まで押し込み、留め金を上げた。
 そして懐から取り出した白い襤褸布で、少女の尻に付着したままの糞を拭い取っていく。布は瞬く間に茶色に染まっていくが、少年は気にした風もない。丁寧に拭き取って、太腿の奥、少女の幼さに似合った無毛の縦筋に溢れた透明な液体をも拭って、それで始末を終えた。
「さ、行きましょう。先に合流しましょうか。そろそろ向こうも終わってると思いますし」
「っ…… ああ……」
 少女は服の袖で乱暴に涙を拭い、自分の産み出した汚物の山に視線を合わせることなく踵を返した。
 洞窟の中、来た道を戻る。その歩みはまるで鎖に繋がれているかのように遅かった。


 外に出ると、空は茜色に染まりつつあった。
 少し肌寒い風と空気の中、金毛の少女はその短い髪を揺らして空を見上げる。
 と、ふと気付けば、その隣へ並ぶもうひとりの少女の姿があった。
「どうだ?」
「問題ない」
「そうか」
 全く同じ声がそう短いやり取りを交わす。
 ふたりの少女は、鏡に映した以上に相似の姿をしていた。
 金糸のような短髪。整った顔立ちに深い藍色の瞳。細い首に嵌った黒革の首輪。闇色の豪奢な衣装。腰の両側に下げた二振りのスティレット。編み上げのブーツ。
 そしてその衣装の下、綺麗な腹に描かれた黒色の魔法陣も。
 違っているところなど何ひとつない。完全と言っていい双子だった。
 その後ろから金属が擦れ合う音を立てながら、もうひとつの人影が追いついてくる。
 ふたりの少女からすれば、見上げるような大男だった。
 顔つきからしてまだ若いと言っていい男。二十代の半ばと言ったところだろうか。
 身長は優に百八十を超えるだろう。その全身に白銀色の部分鎧を着込み、腰には巨大な両手持ちの戦鎚を提げている。背中には風にたなびく金縁のマントがあり、そこに男の所属を示す剣と盾の紋章があった。
「坊主はどうした?」
「触媒を集める、と。先に街へ戻って報告を済ませるのがいいだろうな」
「ああ、そういやそうだったな」
 男はがしがしと後頭部を掻き、その手に持った麻袋――所々にどす黒い血が滲んでいる――を視線で確かめると、ふたりの少女を追い越して歩き出す。
 そんな男に、ふたりの少女は互いに視線を絡ませ、そして男の後ろに付くように肩を揃えて歩き出した。
 ややあって、男が不意に口を開く。
「坊主は何か言ってたか?」
「いや、特には」
「ならいい」
 少年の方に付いていた少女が記憶を探りながら答えると、男はそっけなく返す。
 そんな男の態度に、ふと疑問を覚えた少女が口を開いた。
「聖堂騎士でも、死霊術師を信じることがあるのだな」
 男のマントにある剣と盾の紋章は、全ての邪悪を滅すると公言する聖堂騎士のものだ。
 世界において最も権力のある神聖教会の保持する軍隊でもあり、その力は彼らの敵に対して絶対的かつ無慈悲に振るわれる。
 故に男と少年が出会った当初、少女達はこのふたりは不仲になるだろうと思っていたのだが。
「ん、まあな。言っとくが、聖堂騎士は不浄のものに対して戦うわけじゃねえぞ」
「そうなのか?」
「聖堂騎士が戦うのは邪悪なものだ。死霊術師にロクでもないのが多いのは事実だが、それは死霊術や屍術が邪悪だってことじゃねえ。お前さんらだって、あの坊主があの糞野郎と同じだとは思ってねえだろ?」
「それはそうだが」
 異口同音にふたりの少女が答える。その表情は揃って苦々しい。
「邪悪なのは力じゃねえ。それを使う奴の性根が腐ってるかどうかだ。あまり大声では言われねえが、聖堂騎士の中には死霊術を研究してる奴もいる。対抗するためにはそれを知る必要もあるし、お前さんらみたいな犠牲者を助けるには必要だからな」
 男の言葉に、少女の片方が問う。
「その、助かった例はあるのか?」
「ほぼ、ない。死霊術や屍術の犠牲者って言やぁ、大体は不可逆の半死人状態だからな。『殺して』って頼んでくる奴ばかりだ。その点、お前さんらはまだ幸運な方だろうぜ」
「……どこが幸運なものか」
 口を揃えて吐き捨てるように言う少女。その声に、男は軽薄な笑みを浮かべて喉で笑う。
「いいもんじゃねえか。今みたいに、ケツに栓さえしとけば日の下を歩けるんだ。その気になりゃ糞ぐらい垂れ流しでも生きられるだろう。まあ、嫁の貰い手があるかどうかは知らんがな」
「っ……! 今度はあなたが本当に聖堂騎士なのかどうか、疑わしくなってきたぞ」
「夢見すぎだ。言葉遣いと信仰と力は関係しねえよ」
 そう吐き捨てた男は、これ見よがしにその腰のハンマーの打撃部分に金色の光を纏わせる。
 神に認められた者だけが発現させることのできる、邪悪なもの、不浄なものを焼き尽くす聖飾武器の光。その輝きを目にして、頬を少し紅潮させたふたりの少女は揃って溜息を吐いた。


 三人が街に着いた時には、もう夜の帳が落ちようとしていた。
 男はひとまず冒険者の依頼斡旋所に立ち寄り、その手の麻袋――人ならぬものの身体の一部が一杯に詰められた――を渡してその報酬を受け取り、その足でふたりの少女を引き連れて冒険者の宿へと向かい、部屋を取った。
 宿と言っても、実際は宿屋と酒場と料亭を足して割ったようなもので、何かと役に立つが厄介ごとも多い冒険者という職業を隔離するためのものでもある。
 その宿の一室、四人部屋で三人は最後のひとりである死霊術師の少年の到着を待っていた。
「――食べねえのか?」
 そんな言葉は男のもの。鎧を外し、身軽な服装でテーブルの席に掛け、その目の前にある料理の山を勢いよく腹の中へと収めている。
 そのテーブルの対面に並んで席に掛けるふたりの少女は、料理の山を見ては視線を逸らし、苦々しい顔で目の前の空き皿を睨み付けるということを繰り返している。
 男はそんなふたりの少女の態度について問うたが、勿論、男にもふたりが食事を躊躇している理由など分かっているし、そもそもこういったやり取りは毎度のことなのだから。
 ふたりの少女が摂取した食事は――如何なる術式を以ってかは分からないが――その腹の中で何倍もの質量の糞便へと変化する。食事を行うことは、少女達にとって悪夢の時間が増えることに等しい。
 だが、ただの人間であるふたりの少女は当然ながら食事をせずには生きられない。
 食べて生き、あの悪夢を味わうか。
 あるいは飢えて死ぬか。
 実のところ選択肢などないと分かっていても、それでもふたりの少女は躊躇してしまう。
 以前はこんな選択肢さえ選べなかった。無理やり食事を腹の中に詰め込まれる。そして腹を膨らませ、惨めな時間をただ過ごすしかなかった。
 だから余計に躊躇してしまう。
 解放されてから毎日のことなのに、未だにその迷いはふたりの脳裏にあった。
「無理に食えとは言わねえが、坊主なら食えって言うだろうし、俺もそうした方がいいとは思うがな」
「……」
「生きたいんだろう? お前らは」
 ふたりの少女の脳裏に蘇るのは、あの瞬間のあの言葉。
 男と少年に、身体を拘束されていたあらゆる器具を解かれ、口と尻に挿入されていたパイプを抜かれ、流動食を嘔吐し、汚物を噴き出しながら、何とか搾り出した言葉を。
 ――助けて、と。
 生きたかった。暗く湿った廃砦の奥で、尊厳を踏み躙られ、人ではなく糞便製造機として死んでいくなど、耐えられるものではない。
 あの思いは今だって変わっていない。
 あれから一月が経った今でも、何ひとつ変わっていないに等しいのだから。
 そんないつもの決断を下して、ふたりの少女は食器を手に取り、おずおずと料理の山にそれを伸ばした。
 パンを千切り、肉と野菜を挟み、齧り付く。野菜のスープを掬い、具を噛み砕きながら飲み干す。
 そのどれもが当然ながら、あの流動食よりも遥かに美味しい。
 それだけでも幸せなことなのかもしれないと、ふたりは確実に待っている悪夢のことを少しでも忘れながら食事を取った。


 就寝前になって、ふたりの少女はお互いにベッドの前で向かい合った。
「じゃあ、今日はそちらから先に」
「……分かった」
 片方の少女がその身に纏った闇色の衣装を脱ぎ、下着も脱ぎ、一糸纏わぬ姿になる。
 すらりとした未成熟の身体を一瞥して、少女はちらと視線をふたつのベッドの向こう側に立ててある遮り布に視線を向けた。
 その向こうにはベッドの上で横になる男と少年の姿があるはずだった。
「大丈夫だ。見えはしない」
「分かっている」
 お互いに小声で囁き合うように会話を交わし、ふたりの少女は行動を再開する。
 裸になった片方はベッドの上に上がって四つん這いになり、尻をもう片方の少女に向けた。
 小振りな尻の谷間に、無骨な肛門栓が嵌っているのが背後の少女の視界に曝される。
 自分にもこれと同じものが入っているのだと、自身の尻穴が今も咥え込んでいる異物の感触をより気にしながら、もう片方の少女は目の前の肛門栓に手を掛けた。
 留め金を外し、ひとつ息を吸って肛門栓を掴み、抜きに掛かる。
「っ、お、あぁ……!」
 抜かれている方の少女は舌を突き出して、巨大な排泄感に耐える。
 抜き取った瞬間、腸内に溜め込んでいるものが噴き出て自分の片割れに掛かってしまいそうで、それが怖い。
「っく……!」
 抜いている方も、ぬちぬちと肛肉を僅かに露出させながら抜けていく肛門栓とその時の自身の片割れの様子に、目と耳を塞ぎたくなる。
 双子だけあって、自分も抜かれている時にこんな声を出していて、こんな惨め格好をしているのだと分かってしまうからだ。
「ふ、う……! っあ!?」
 ぬぷ、と時間を掛けて肛門栓が抜ける。
 鮮やかな肉色の直腸が、だらしなく開ききった肛門から覗いている。片方の少女は咄嗟にそこから目を逸らすと、荷物から予め出しておいたものを肛門を開かせている少女に手渡した。
 それは、いわゆるおむつと呼ばれるもの。
「す、すまん」
 手渡されたそれを少女は苦々しい表情で見つめ、ややあって着け始める。股当ての部分を無毛の股間に通し、前でしっかりと留める。太腿と腰周りが緩くないことを確認すればそれで終わりだ。
 何故このようなものを着けなければいけないのか。少女はそれを惨めに恥ずかしく思いながらも、納得せざるを得ない。
 少女の腹の中で増殖する糞便は、肛門栓を付ければ睡眠中でも垂れ流さずにいられる。
 だが、それは解決にはならない。糞便が時間経過で何処かに消えるわけではない以上、極力早期に排泄しなければならない。そうしなければ、少女の腹の容量などお構い無しに増殖していく糞便は少女の腹を破裂させるか、さもなければ口や鼻から溢れ出すことになる。それは認められない。
 だから、排泄にいくことの出来ない睡眠中は、漏らすしかない。
 このおむつはふたりの少女のために特別に作られたもので、桶数杯分にも及ぶ少女の排泄物の全てを受け止め切ることは出来ないが、眠っている間に逆流や腹の破裂を防ぐ程度には少女の腹に余裕を作ることが出来る。
 だから仕方ないのだ。漏らすことを前提に着けているというのは死にたくなるほどに惨めだが、これを付けていなければ糞まみれで死ぬことになる。
 そう言い聞かせながら少女はお互いに肛門栓を抜き、そしておむつを身に着け、ベッドの上で布団を被った。
 
 
 今日もふたりの少女は一緒で、多くの人々の前で歌を披露している。
 美しいソプラノの唱和。お互いの思考が分かっているのではないかというほどにぴったりと息の合ったそれに、惜しみなく賞賛の声が送られる。ふたりはそれに可愛らしい満面の笑みでお辞儀を返し、更に別の歌を披露する。
 調子よく朗々とホールに響く歌。
 それが山に差し掛かろうかという時、ふたりの歌姫の腹から、ぎゅるり、と音がした。
 鈍い痛みを腹に覚えつつも、少女達の歌は乱れず、止まらない。それに業を煮やすかのように、腹の痛みは徐々に強くなっていく。
 ぎゅるごろ、と大きな音がしたが、ふたりの歌声にかき消されて観衆には届かない。
 脂汗を流しながらも、歌姫は歌を止めない。
 そして歌を続けるために息を継いだ瞬間、限界は訪れた。
 やはり歌声にかき消されてその音は小さなものとなったが、ふたりの傍に立っている者には、ぶりゅぶりゅ、という下劣な破裂音が聞こえたことだろう。
 少女達の白いドレスの尻の辺りに茶色い染みが幾つか現れる。ぼとぼと、びちゃびちゃとふたりの足元に汚物が山を作り始める。そして辺りに激しい異臭が漂い始める。
 それでもふたりの少女は歌を止めない。観衆も少女の歌に聞き惚れ、少女の凄まじい粗相には誰も目を向けない。
 やがて歌が終わる。再び惜しみない賞賛が送られ、双子姫は自身の汚物で茶色く汚れたドレスを身に纏ったまま丁寧にお辞儀を返した。足元には糞便の山。だが、それを気にする者は誰一人としていない。
 まるで、それがあることを当然としているかのように。


 ふたりの少女が見る夢は、大体がまだ腹が綺麗だった頃の夢だ。
 山の中にある、ほんの小さな王国。牧畜が盛んという長閑な国で、ふたりは豪奢なドレスを着て、父親と母親の隣で手を繋ぎ、いつも微笑んでいた。本を読むこと、歌うこと、踊ることが少女達の趣味で、狭い世界ではあったが幸福に満ちていた。
 だが、その思い出も今は穢されてしまっている。
「う……」
 ふたりの少女は揃って目覚め、尻を覆う不快な感触に眉を歪めた。
「……お早う」
「……ああ」
 お互いに挨拶を交わし、ベッドから降りる。
 そして互いの尻を見れば、そこは目を覆うほどの惨状になっていた。
 限界まで膨れ上がったおむつは、尻側の部分が全て茶色に染まっていて、中が少女の寝漏らした汚物で一杯になっていることが容易に知れる状態だ。横漏れや滲み出していないのが幸いと言えるだけで、とても他人に見せられるものではない。
 そしてそれだけの量を漏らしてなお、ふたりの少女の腹はまだぽこりと膨れ上がっている。
 腹に力を入れれば、直腸と同じだけの太さを持った大便が開き切った肛門を擦るのが分かる。むりゅりと出て、すぐにおむつに抑えられて直腸内に引っ込んでいく。不快と羞恥に顔を歪めながら、ともかくふたりの少女はそのおむつの上からいつもの黒衣を纏った。
 昨日抜き取った肛門栓を懐に隠し、連れ添って寝床を出る。
「お早うございます」
「ん」
 既にテーブル前では男と少年が身軽な装いで朝食を摂っていた。
「お早う」
 それに硬い表情でぎこちない会釈を揃って返し、ふたりはテーブル傍を通り過ぎて部屋を出て行く。
 男と少年はそれを見送るだけで、特に追求はしない。少女達の身に起きていることと、毎日の朝一番にしなければならないことなど分かり切っているからだ。
 通路を進み、階段を下り、ふたりの少女は宿のホールに出る。
 ホールは宿の受付でもあり、酒場と料亭のスペースでもある。既に朝食を摂る冒険者も大勢おり、その中には現れた双子の美少女に視線を向ける者も少なくはない。
 毅然とした様子で連れ添って歩くそのふたりの黒い衣装の下に、糞便を限界にまで溜め込んだおむつがあることなど誰が予想できるだろうか。
 僅かな者が鼻に掠めた異臭に気付き、何処からの臭いかと視線を向ける。その視線があらぬ方向に向いている間に、少女達は宿から外に出た。
 尻に張り付く不快な感触を受け続けたまま、それでもふたりの少女は歩く。
 目指しているのは城壁の外。
 番兵に会釈をして通り過ぎ、門の外に出るとすぐさま街道を脇に逸れ、林の中へと入っていく。
 そして道がぎりぎり見えなくなったところの木陰で、ふたりの少女は互いに服の裾を支え、その腰に巻いたおむつを外し始めた。
「んっ……!」
 大量の糞便を抱いたままふたつのおむつが草の地面に落ち、べちゃりと音を立てて茶色い破片が跳ねる。
 その跳ね返りがブーツに付着することも構わず、双子の少女は抱き合ったまま、共に激しい脱糞を始めた。
「あ、あぁ……!」
 どちらのものとも分からない悲鳴が上がると同時に、押し付けあっている膨れた腹に描かれた魔法陣が共鳴するように黒く輝き始める。
 みちみちみちみち、むりゅむりゅむりゅむりゅ、と軟便が凄まじく太く長い一本――いや二本となって少女のふたつの尻から垂れ、おむつの上にある汚物の山の上へ更なる山を作っていく。
 その勢いと量は相変わらず凄まじい。かなりの速度で直腸と同じ太さの糞を排泄しているにも関わらず、全く途切れることがない。開き切った肛門は時折ひくりと痙攣するかのように震えるが、それが便の太さに影響を及ぼすことはない。
「お、ふ、うぅ……!」
 少女の、お互いを抱き締める力が悲鳴と共にぎゅうっと強くなる。瞬間、それまでひり出していた軟便はぷつりと途切れ、放屁による破裂音と共に溶岩のような液状便がふたりの肛門から噴き出した。
 地面は勿論、周囲の草花や木に茶色い雫と便滓を飛ばしながら、自身が形成した軟便の山の上に今度は下痢便をデコレーションしていく双子の少女。
 既に下敷きになったおむつの白い布片など何処にも見当たらない。ただ激臭を発する茶色い小山があるだけだ。
「う、あ、いやぁぁ……!」
 激しく脱糞しながら揃って嗚咽を漏らし、相手の肩に顔を埋めるふたりの少女。
 そのふたりの、自身の糞で汚れた無毛の縦筋からは、透明の粘液が溢れていた。
 強い便意からの解放に、少女はすっかり快感を覚えるようになっていた。
 勿論、それを双子は認めない。男を知らぬ穢れなき処女の癖をして脱糞で快楽を覚えるなど、あってはならないことだ。
 けれど否定すれば否定するほどに何故か股間は熱を持って潤み、尻穴は糞をひり出すことに歓喜する。
 それが背徳だということを、ふたりの少女はまだ知らなかったのだ。


 数分で双子の少女の排泄行為は終わり、やはり同時に魔法陣の輝きも消え失せた。
 お互いに尻を差し出し合って、尻全体に付着した汚物の後始末を終える。そして再び、あの屈辱的な肛門栓を挿入するのだ。
 閉じた菊門を、無骨な肛門栓でこじ開けて固定する。せっかく閉じたのに、とは思っても、少女の括約筋は実際には役には経たない。ある一定までは我慢できても、一度魔法陣が輝けば力を入れずとも勝手に開き、少女の許可なく糞便をひり出し始めるからだ。
 尻穴に戻った異物感にひとつ息を吐きながら、ふたりの少女は揃ってスティレットを片方だけ抜く。
 そしてそれを自分達が積み上げた糞の山に向け、力ある言葉を呟いた。
 茶色い山に青白い炎が灯り、ぶすぶすと妙な音とより強い激臭を立てて焼き焦がしていく。
「……っ」
 その臭いに紅潮した顔を歪めながら、しかし自分達のひり出した汚物の後始末を最後まで見届けるふたり。
 こうしておかなければ、ふたりの汚物は不浄なるものの最上の食料となって彼らを引き寄せるばかりか、様々な動物を生きた屍にしてしまう。
「……戻るか」
「ああ……」
 汚物が焼き尽くされたのを見届けて、ふたりの少女は踵を返す。
 彼女らの一日は、まだ始まったばかりだ。

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