※警告!
お尻の精霊が降臨しつつあります。
そちらの属性がない方は「うわ駄目だ」と思った時点で回れ右を推奨致します。
ちなみに汚物描写まではありません。
――幾度、もう限界じゃ、と思ったろうか。
――幾度、好きにするがよい、と口にしかけただろうか。
幾度、幾度。
悠から漂うあの匂いが、わらわの正気を音を立てて削っていくのが分かる。
幻影界に居た頃には知らなかった、とても甘美な雄の、悠の匂い。
嗅ぐだけで、かような気持ちになれる、あの匂い。
悠の匂い――
(……む?)
竹林の中。
身体の奥でうぞりと長蟲が鎌首を擡げたようなあの感覚を、最初は気の所為かと思った。
故に表情には出さなかったし、疑問の声を上げる事もなかった。
じゃが、時間が経つにつれ、わらわの中で生まれた長蟲共はわらわの身の中で蠢き、ついには心の臓を締め付けるような飢餓感へと変わった。
同時、頭の中に何故か浮かんだ思考はただ一つ。
悠と繋がって、その精を得たいと――ただそれだけの、しかし強固なモノじゃった。
それを認識すると同時に、あの匂いが嗅覚を突き始めた。
悠に近付くだけで、匂いはより強くなり、飢餓感が僅かに満たされていく。
最初はそれで、何とか己を律する事が出来た。
だが匂いを感じれば感じるほど、満たされた飢餓は後になって跳ね返るようにその度合いを増していく。
妖精炎の力を使い飢餓を押さえつけ、平常を装いながら、湯浴みの時に悠と触れ合った。
今思えば、あの時素直に口にしておれば良かったのやも知れぬ。
だが、それは持ち前の素直でない性格が許さなかったし、今悠と交わったら、この飢餓が満たされたら、どうなるのか。
それを思うと、未知の恐怖が先に立って口にする事は叶わなかった。
後悔したのは、歓迎会での会場の事じゃった。
湯浴みの時に悠の精を浴びたからか、飢餓は急激に鳴りを潜め、平常に振舞う事が出来た。
ならばと、やせ我慢をするかのように人込みに紛れ、飲食を続け。
ややあってわらわの身を再び飢餓が襲った時、わらわは身を折るような不快感に苛まされた。
原因は、周囲の人込みから漂う、人間の雄の匂い。
匂い自体は悠のモノと極めて似ていた。じゃが、わらわの飢餓感はそれを強く拒絶した。
悠の匂いでなければいけないと察したのが数分前の事。
わらわは飢餓感と不快感で、もはや僅かたりとも動く事が出来なかった。
身体は、誰でもよい、雄の匂いを、と精を求めて飢餓を訴えるものの、別の何かが、その雄は悠でなければならぬ、と身体に入る他の雄の匂いに対して不快を訴える。
満たされぬ身体。
こんなにも己の身体に苦しめられたのは、初めての事じゃった。
飢餓はやがて苦痛に変わり、心の中で悪態を吐いて――
視界に悠の姿が入った時、それだけで苦痛は去った。
そして、凄まじい飢餓が襲い来る。
「どうしたのじゃ、悠よ。そのように慌てて」
「あ、いや…… その、大丈夫か?」
「ふむ? 要領を得ぬな」
顔に出ていたか、と一瞬だけ思考して、悠の様子からそうではないらしい事を察する。
恐らくはミゥか、ネイか、あるいはノアか。
「大丈夫じゃよ。少々気分が悪くなっての。少し人込みから離れた場所にいるだけじゃ」
笑みを浮かべてそう言ったものの、悠の表情はあまり穏やかではない。
相変わらずの心配性じゃったが、今は「少々」どころではない為に、その気使いがこの上なくありがたかった。
「部屋に戻るか?」
「心配要らぬ、と言いたい所じゃが。折角の主の好意じゃ。頼めるかえ」
「分かった。ちょっと待っててくれ」
あくまでも素直でない自分に内面、苦笑しながらそう伝えると、悠はわらわに背を向けて人込みの中に小走りで戻っていった。
思わずその服の裾を掴みそうになったが、すんでのところで手は動かなかった。
恐らくはピアの所に報告に行ったのだろうと、すぐに察しはつく。
しかしその時、妖精石の奥に広がった黒い澱のような感情を、わらわは見逃さなかった。
(ふ、む)
あまり良くない感情である事を認めながら、辺りに漂う悠の残り香に意識を寄らせる。
それだけで先程までの不快感は消えて、身体が、特に下腹が熱を持つのが分かった。
(なんじゃ、これは)
この感覚は――そう、悠との愛の営みの時に感じたものに似ている。
不快感が消え、周囲の人込みから漂う雄の匂いに、身体が反応しているのじゃろうか。
いかん、と思いつつも、視線は周囲にいる人間の雄達を捉え――
「――ヅィ?」
「……む、悠か。待っておったぞ」
いつの間にか傍に戻ってきていた悠の声に驚きながら、冷静を装う為に一拍待ってから返事をする。
しかし隠しきれていなかったか、じっと悠はわらわの顔を見つめてきた。
「……なんじゃの。人の顔をそんなにまじまじと見おって」
「いや、何でもない。行くぞ」
言うなり、悠はわらわの身体を抱え上げ、肩の上に乗せると、急ぎ足で会場を出た。
振り落とされる事などないが、それでも悠の頭にぎゅっとしがみ付き、悠の体温を感じる。
それだけで、わらわの身体はその熱を激しくしていく。
「――なあ、ヅィ」
「……なんじゃ?」
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃと、言っておろ?」
体勢の関係でその顔は見えぬが、いつもの心配顔をしているのは容易に分かった。
少し苦笑しながらわらわは答える。
体調など既に悪くなく、今は悠が欲しくて仕方がなかった。
その意思を察したのかは知らぬが、更に急ぎ足になる悠。
瞬く間に部屋に着いた事に、人間の足は便利じゃな、と思う。
部屋に入って奥の寝室のベッドに着くと、悠はわらわをその上に降ろした。
「すまん、の」
「気にするな。水でも持って来るか?」
「いや、いらぬ。傍におってくれれば、それでよい」
身体が熱くて仕方がない。
その熱を冷ますように、空気と共に冷えたベッドへ身体を投げる。
服が邪魔ではあったが、脱ぐ事すら億劫だった。
ややあって、悠がわらわの隣に入ってくる。
同衾してくれる事にこの上ない嬉しさを覚え、わらわはゆっくりと悠に顔を向けた。
もう我慢ならぬ。
「――のう、悠よ」
「ん?」
「前もって断っておく――すまんの」
「……おいおい、なんか不吉な話だな」
これからの行為を先に謝罪すると、悠は何を思ったのか軽い笑いを浮かべた。
恐らくは、やや意識のすれ違いがあるのだろうが、そんな事はこの際どうでもよい。
「ともかく、無理はするな。寝よう」
「うむ」
もう悠の顔をただ見ている事も辛くなり、視線を逸らす。
最後の駄目押しとばかりに、わらわは口を開いた。
「主よ」
「うん?」
「傍に、おってくれよ?」
「ああ」
すぐに迷いない答えがあって、わらわは安堵にゆっくりと息を吐く。
身体はもう燃えているが如き熱さで、多量の汗で下着が肌に張り付いている。
それでも不快感はなく、これから悠と交わる事が出来るという、ただその想いにわらわの思考は支配されていた。
これが、恋焦がれる雄と交われる、雌の喜びというものじゃろうか。
そんな事を思いながら、身体の熱の中心――下腹にそっと手を遣る。
はっきりと分かるほどの熱に小さく苦笑して、手をより下に遣った。
下着に包まれた股間は、汗と、汗以外の何かよく分からぬ液体でかなり濡れていた。
中に指を差し入れると、指に纏わり付く粘り気のある液体。
粗相でない事は確かじゃったが、ならば何故これほどまでに濡れておるのか、という事には疑問を覚える。
後日、悠かミゥに聞いてみるのがいいやも知れぬ。
そう思いながら、ふと感覚を悠に向ける。
悠は静かな吐息をするばかりで、既に意識は落ちてしまったようじゃった。
「……悠」
念の為に呼び掛ける。
反応がない事に安堵したか、やや失望したかは、わらわ自身にも分からなかった。
ともかく身を起こし、もう一つの問題に対処しなければならぬ。
ベッドを抜け出して、手前の部屋に戻る。
そこでは、突然悠とわらわが戻ってきて、無視された形になるニニルがいた。
「――あ、どうしたのですか? ヅィ様」
「……」
「……ヅィ様?」
ニニルの背後の畳には、広げられた手帳や雑記帳がある。
恐らく、今の内にと記事でも纏めていたのじゃろう。
勤勉な奴じゃ、と思いつつ、わらわは笑みを浮かべて――ノーガンウェモルを取り出し、構えた。
「!?」
奴の目が見開かれる。
その口から何か言葉が発される前に、わらわの妖精炎魔法が先手を打った。
一瞬の痙攣の後、ぐらりと力を失って屑折れるニニルの身体。
傍の机の足に頭を当てぬよう抱き止めてやり、そのまま適当な畳の上に寝かせておく。
これで営みの準備は整った。
奥の部屋に戻り、ベッドに乗って悠の傍へ行く。
わらわがしばし抜け出した事に気付かず、小さな寝息を立てる悠。
抜け出した瞬間に気付いたならば嬉しかったのじゃが、まあそれはそれ。
わらわはゆっくりと、悠の息を塞ぐように口付けを交わした。
僅かに呼吸が苦しくなったのを受けて、悠は浅い眠りから目覚めた。
その眼前には、ゆっくりと離れていくヅィの唇と、笑みを浮かべるその表情がある。
いつもとは違う、酷く妖艶な笑み。
「悠よ」
「……ヅィ?」
「わらわは、もう、我慢ならぬ」
熱い吐息と共に紡がれた言葉が悠の脳で咀嚼される前に、悠の腰に軽い重みが圧し掛かった。
ヅィが彼の腰に跨ったその重みは、動きを妨げるほどではない。
だが、彼女から発される、いつにも増して妖艶な雰囲気が、悠の動きと思考を鈍らせていた。
「……身体の調子は、もういいのか?」
「くふ、済まぬな。騙した訳ではないのじゃが、もう心配要らぬ」
見ようによっては、幼児と大人が騎乗位で交わっている風にも見える体勢で、彼女は強く笑う。
「これから、満たされるのじゃから」
「満た、される? 何を言って――」
「今は、わらわの言葉を主が気にする必要はない。ただ――」
言いながら、ヅィは人差し指を悠の額に突き付け、そして言葉を締めた。
「わらわの望むがままに、主がわらわを犯し、わらわが主を犯せばよい」
同時、ヅィの背中の翅が淡く虹色に輝いた。
妖精炎魔法の発動を示す燐光が散り、彼女の中を渦巻く力が腕を伝い指を伝い、悠の身体に流れ込む。
彼女の行った妄想はただ一つ。
悠の、ヅィに対する性的な欲望の増加。
「……これは、夢なのか?」
「やも知れぬの」
くふ、とヅィが笑う。
「主がそうあればいいと思う方向に考えればよい。わらわはそれを否定せぬ」
「そう、か」
悠は目頭を押さえ、何かを確認するかのように一つ頷いた。
「じゃあ、ヅィ。服を、脱いでくれないか」
「くふ。主の優しいところは好きじゃがの、この場に相応しい言葉遣いというものがあると思うが?」
「む」
笑みを伴う否定に、悠は少し考え、
「服を脱げ、ヅィ」
と、命令調で言い直した。
その言葉を受けてヅィは笑みを深め、呼応する様に悠も笑う。
「これで君は、言質を得たという事になるのか」
「くふ。主はお淑やかな雌が良いようじゃからの?」
あくまでも、行為に及んだのは悠の側からだと。
滑稽ではあるが、精神の蓋を揺するには有効な遣り取りだ。
「愛する主の命令では仕方あるまい。 ……脱ぐとするかの」
言って、護服の胸元のボタンに手を掛けるヅィ。
護服の前が開かれ、彼女の胴を隙間なく覆う下着が露になる。
そこで不意に、悠は制止の声を上げた。
「待て、ヅィ」
「む?」
「脱ぐのは、下着だけでいい」
言われて、ヅィは少し動きを止めた後、やや眉を顰めて下着を外しに掛かった。
流石に上を脱がずに下のそのボディースーツに似た下着を脱ぐのは苦労するのか、やや時間を掛けて、下着だけが悠の腹の上に落ちる。
悠はそれを己の上から取ってベッド脇にある椅子に置くと、じっと彼の動向を見守るヅィの胸元に手を伸ばして、護服のボタンを戻した。
これでヅィの外見は変わらぬものの、その護服一枚下は一糸纏わぬ裸体がある事になる。
「それで、どうするのじゃ?」
疑問に悠は答えず、己の腰、やや上にあるヅィの護服の裾に手を伸ばした。
彼女の太腿の間を這うようにして、その暗がりにある股間に手を触れる。
そこにあるのは、十分過ぎるほどに濡れた柔らかい秘肉の感触。
「な、何を笑っておる?」
「いや、もう準備できてるみたいだな、と」
「準備? ……そ、粗相ではないぞ? これは」
「分かってる」
手を戻し、指の間で糸を引くヅィの愛液を確認して、悠は己のパンツに手を掛けた。
ジーンズを下ろし、下着を下げると、その中にあった物が勢い良く勃ち上がる。
その瞬間、先端がヅィの割れ目に触れたか、っ、と小さく驚きの息を漏らす彼女。
「ヅィ。自分で入れてみろ」
「じ、自分で、とな? 何を、じゃ?」
「言わなくても分かるだろ?」
う、む。と歯切れ悪く頷いてから、ヅィはそっと腰を下ろす。
互いに確認出来ない彼女の護服のスカート部分の中で、くちり、と小さな粘性の水音を立てて、悠とヅィの性器が触れ合った。
しかしサイズが違いすぎる事もあってか、引っ掛かる事もなく滑ってしまう。
「っ、ぬ、あ……」
「俺のを掴んでいいから、もう少し頑張ってみろ」
「う、うむ」
入らない事にもどかしげに声を上げるヅィに、悠は苦笑しながらそう声を掛ける。
頷いたヅィは片方の手を己の護服の裾から進入させると、中で塔のように立つ悠の肉棒をゆっくりと掴んだ。
彼女にとっては槍に等しい、その大きさと長さを確かめるように手を這わせ、先端、カリに近い部分を持って、己の股間――そこにある幼い縦筋に位置を合わせる。
そして再び、ゆっくりと腰を下ろした。
「っ、ふ、くぅ、ああぁ……」
肉棒の先端が縦筋を割り、そこにある肉の穴に引っ掛かる。
更にヅィが体重を掛けると、肉の穴が広がって、肉棒を中に受け入れようとする。
だがあまりにもサイズが違いすぎる所為で、僅かな痛みと、杭を押し込まれるような感覚をヅィは得ていた。
自分の身体が限界まで広がり、割られていくような重い感覚。
初めての時にも一度得た感覚ではあるが、自分で押し込んでいる所為か、あの時よりも重いとヅィは思う。
「っぐ、っ、くぅ、あううっ……」
時間を掛けて、亀頭が、限界まで押し広げられた縦筋に完全に埋まった。
そこからは早い。
十分過ぎる量の愛液の助けを得て、肉棒の幹が彼女の中に呑まれていく。
こつ、と先端が彼女の最奥を叩くと、ヅィは思わずその感覚に身を震わせた。
「は、入った、かの?」
「ああ。ぎゅうぎゅう締め付けてきて、いい感じだ」
「そ、そう――っひ!?」
悠の言葉に安堵を覚えたヅィの言葉が途中で途切れ、声を伴わない悲鳴に変わる。
思わず足の力を弱めたところ、ヅィの胎内に収まり切っていない肉棒の余りが、彼女の最奥を無理に押し上げたからだ。
状況を察したか、慌てて悠が彼女の腰を捕まえる。
「ゆ、悠、この体勢は」
「どうした?」
「ふ、深すぎる。貫かれてしまいそうじゃ……!」
慌てて抗議の声を上げるヅィに、そ知らぬ振りをする悠。
普段の余裕を失ってしまっている彼女に、悠は小さく笑う。
「な、何を笑って、っあッ!? こ、これ、突くでない、あ、あッ!?」
ヅィの抗議を、下からこつこつと突き上げて中断させる悠。
最奥を突く度に、面白いように悲鳴を上げて言葉が止まる。
「ほら、ヅィも動いて、俺を気持ちよくしてくれよ」
そんな身勝手とも取れる発言に、しかしヅィは僅かに言葉を止めただけで、恐る恐ると腰を上げる。
ゆっくりとスカートの中でヅィの胎内から肉棒が抜け、その度に彼女の身が痙攣するように震える。
「ゆ、悠」
「ん?」
「身体が、壊れそうじゃ」
自分の二の腕に匹敵する大質量が女性として最も大切であるらしい所を貫く感覚は、ヅィの今までの生の中では無かったものだ。
入ってきたり抜け落ちたりする度に、凄まじい重圧と空虚を感じる。
同時に、背筋が震えるような快感が頭を刺激し、どうにかなりそうになってしまう。
「う、動くぞ?」
「ああ」
ゆっくりと、再びヅィの腰が下がる。
にちにち、という肉と水の音を立てて、悠の肉棒が温かくきつい肉に包まれていく。
びくびくと小刻みに震えるその胎内を楽しみながら、悠は視界やや斜め上にあるヅィの顔を眺めた。
普段にはない、余裕を失った淫らな顔。
必死に足に力を込めるも、襲ってくる快感と重圧、そして痛みに力が抜けそうになっているのを、必死に耐えている顔。
「ヅィ」
「な、なんじゃ」
「可愛いぞ、凄く」
言って、悠は腰を軽く突き上げた。
「っ!? ひ――うあッ!?」
僅かな動きで、しかし狭いヅィの胎内が一気に肉棒で埋まる。
強い衝撃と快感に、辛うじて身を支えていた彼女の腰が砕け――その全体重が最奥を突く肉棒に圧し掛かった。
「うあっ、あっ、あッ、ゆ、ゆうッ、っあ、ああ、ああっ!?」
快感に身を捩じらせ、その動きで最奥がごりごりと刺激され、その快感に身を捩じらせ――
槍に貫かれて痛みにのた打ち回る罪人のように、ヅィが悠の腰の上で暴れる。
もはや余裕も何も保てず、ただ涙と涎を撒き散らしながら、ただひたすらに喘ぐ。
「あッ、いっ、あう、あ、ひいっ、あっ、ぐ、ひッ、あッ、あっ、あああああッ!」
不意に、短い悲鳴は尾を引く絶叫に変わり、ぎちりと悠の肉棒を締め付けた。
それきり言葉を失ったヅィが、力尽きるように悠の身体の上へと倒れ込む。
荒い息を吐く彼女の頭を撫でながら、悠は二、三度腰を打ちつけた。
こつ、こつと胎の最奥を突く度、ヅィの身体が力なく痙攣する。
「っ!」
そして悠も、己の欲望を彼女の狭い胎内へと放った。
「っ、あ…… う……」
びゅくり、びゅくりと精の脈動が響く度に、ヅィが小さく喘ぎを上げる。
彼女が感じるのは、身体全体を撫でるような心地よさだ。
精を受け、満たされるという感覚が、ヅィを包み込んでいた。
「ん、ふ……」
ヅィは緩い笑みを浮かべる。
そして暖かい気持ちの中で思う。やはり世界は広い、と。
こんな気持ちになれる、かような行為があるとは。
今まで知らなかったのが悔やまれると、本気でそう思った。
一方、己の身体の上、ヅィの下腹が自身の脈動に合わせてゆっくり膨らんでいくのを悠は感じていた。
いつもならばここで一息を吐いて、相手を――ヅィを気遣うのだが、行為の前に掛けられた妖精炎魔法の効果が、悠に更なる行為を行わせようとしていた。
無言で身体を動かし、悠は己とヅィの身体の位置を入れ替える。
ヅィをベッドの上にうつ伏せに寝かせ、自分はそこに覆い被さるように。
そして護服の裾をたくし上げると、露になったヅィの秘部からゆっくりと肉棒を引き抜いた。
「っ、あっ、くぅ……」
吸い付く肉を引き剥がすように、肉棒をヅィの胎内から抜き取る悠。
強い抵抗と共に亀頭が抜け、しかしヅィの縦筋は明らかなサイズ違いの異物の挿入にも関わらず、挿入前と同じ様相を保っている。
違うのは、僅かに白く濁った愛液の涎を垂らしているかどうか、だ。
悠はその縦筋に手を伸ばし、指先に愛液を絡め取って――その少し上、秘めやかに佇む菊門に触れた。
「……っ!? ゆ、悠、何を……」
「いや、ヅィのこっちの処女も、欲しい」
「しょ、処女……!? 馬鹿者、そこはそもそもただの排泄――っひ!?」
愛液を纏った人差し指が、十分な潤いを持ってヅィの小さな菊門に潜り込む。
膣とはまた違う感触を楽しむように、腸壁を悠の指が撫で回していく。
その指の動きを押し留めるかのようにぎちぎちと締め付けてくる括約筋の圧力が、また何とも言えない感触だ。
「ば、馬鹿者…… 抜け、抜くのじゃ……! 頼む……!」
命令と懇願が入り混じった訴えに、悠は無言で答える。
指は染み出してきた腸液を絡めながら、括約筋を緩めるように、その肉の輪の内側を撫で、拡張するように押し広げていく。
ふむ、と頷きながら、頃合を見て悠は指を二本に増やした。
「ぐ、あぅ……!?」
人差し指に加え、薬指をヅィの菊門に挿入する。
腸液を二本の指の間で絡めながら、肉の輪を少しでも広がるようにしていく。
「ヅィの後ろの穴は広がりやすいな。結構、素質があるんじゃないか?」
「な、なにを……」
顔を真っ赤にして言葉を詰まらせるヅィに、悠は内心で笑う。
身体や筋肉が柔らかいというのは、ヅィに限った話ではなく、ミゥやシゥでも同じだからだ。
締まる時は悠の指や肉棒が千切られそうなほど締まるのに、力が抜けてこなれていると驚くほど柔らかい。
恐らくは種族としての特性なのだろうが、悠はあえてそれを言う事はしなかった。
ただその代わりに、指を三本に増やしてやる。
「う、あ……!?」
肉棒を胎に挿入した時と同様、小刻みにヅィの身体が震える。
無理やりに排泄の穴を広げられる事に、全身の力が定まらないのだろうか。
ゆっくりと三本の指を開くと、菊門に暗い穴が開く。
悠はまじまじとその穴を見つめ、ゆっくりと顔を近づけると、その穴の縁に舌を伸ばした。
「っひ!? ゆ、悠、何を――!? 馬鹿者、やめ、止めぬか!? 正気か、主!?」
腸液の滲む穴の縁を、ぐるりと舐め回す。
括約筋という肉の輪を確かめるように舌を這わせると、呼応する様にヅィは身体を震わせ、短い罵倒の声を上げた。
けれど悠は舌を動かすのを止めず、それどころか直腸内へと舌を差し込んでくる。
「ひ、あぁ……!? そこは、そのようなッ…… やめ、主、汚い……!」」
生暖かく柔らかいものが腸内で蠢く感覚というものを、ヅィは初めて得た。
普通ならば嫌悪感が先に経つ筈だったが、それが愛する者の味覚器官だというのだから、よく分からない感情だけが暴れ回る。
恥ずかしい、という想いと、嫌悪してはならない、という思いと――
その続きを意識してはならないとヅィは思考を中断する。
だが、気持ち悪い、という想いが全くない事が、より彼女の思考を混乱させる。
「っ、ひぃ……!」
ぬるり、と舌が直腸内から抜かれる。
悠はヅィの腸液の絡んだ舌を口内に戻し、ふむ、と一つ頷いて、
「な、なにを頷いておるッ……」
「ああ、いや。気にするな」
そう言いながら、やはり甘い、と悠は思う。
唾液の時などと同様に、ヅィの腸液もまた、甘かった。
純粋に、花の蜜のような甘みがある。
やはり体液なら総じて甘いのだろう、と思いながら、悠はヅィの菊門を確認する。
三本の指によって閉じるのを妨げられている菊門は、その中の肉を暗く曝している。
試しにもう少し指に力を入れて広げてみると、強い抵抗があるものの、ゴム素材のように無理なく広がっていく。
これならいけるだろうと、悠は肉棒をヅィの菊門に添えた。
ゆっくりと体重を掛けながら、まず亀頭を通し、指を抜いて、幹を押し込む。
「う、あ、お、お、お、あ、あああ……!?」
排泄口から異物が逆流し、制圧するという事態に、ヅィがお世辞にも可憐とは言えない悲鳴を上げる。
括約筋がぎちぎちと締め付けてくる中、悠の肉棒はその半分を埋め、更に侵入していく。
膣の時とは違い、限界のない挿入に、ヅィは舌を突き出して涎を垂らし、脂汗を掻きながら耐える。
「ゆ、ゆ、う……」
「もうちょっとだ、我慢しろ」
「お、う、あ……」
ややあって、ヅィの尻が悠の腰に密着し、悠の肉棒を根元まで腸内に飲み込んだ事を二人に知らせた。
だらだらと脂汗を流し、小刻みに身体を震わせるヅィを優しく腕に抱いて、悠は頭を撫でる。
「入ったぞ、全部」
「う、う…… 腹が、はちきれそう、じゃ……」
ミゥがいたら「それがいいのに」とでも言った事だろうと悠は思う。
彼女は既に三度ほど後ろの穴での交わりを経験しているが、二度目から早くも濁った喘ぎを上げ、強い快感を得ていた事を思い出す。
その時に気が狂ったかのように吐き出されるはしたない言葉の数々は、思い出すだけでも興奮する。
それを、この気高い妖精の姫にも言わせてみたいと思うのは、そうおかしな事ではないはずだ。
「動くぞ」
「ま、待て、う、ああっ」
悠はヅィと繋がったまま身を起こし、同時に彼女の身体も抱きかかえる。
菊門を貫いている肉棒が僅かに抜け、しかし体勢が変わり、ヅィが上になった事で彼女自身の体重でまた奥深くまで肉棒が侵入してくる。
その僅かな動きで、ヅィの汗は更に増えた。
身体の内側からの圧迫感が、前の時の比ではないのだ。それに押される時は内臓が押し込まれるような感覚があり、抜かれる時は内臓ごと持っていかれそうな感覚がある。
排泄の穴を大質量の肉の塊が排泄、逆流を繰り返す感覚は、凄まじく奇妙で形容し難い。
少なくとも、まともな妖精が得る感覚ではない、とヅィは思う。
「う、お、ふ……」
「気持ち悪くないか?」
体勢が背面座位に移行した所でそう聞かれて、ヅィはなんとかといった感じで首を縦に振る。
あまりの挿入の深さに、身体の動きが麻痺しつつある。口も、呼吸が最優先で、その合間に何とか喋る事が出来るという有様だ。
ヅィの頷きを確認した悠は、そうか、と言って別段悩む風もなく、二人の結合を前から隠している彼女の護服のスカートの前部分をたくし上げた。
露になる、愛液という名の涎で濡れた縦筋と、その下で精一杯に広がって、肉棒を咥え込む菊門。
「これを咥えて、自分で前を弄くってみろ」
悠が咥えろと言ったのは、スカート部分の裾。
言われるままにヅィは裾を口に咥え、先程から空いている手を自分の縦筋へと遣った。
割れ目を撫で、中に指を差し込み、淫核に触れる。
少し前の行為で感じていた普通の快感に小さく安堵しながら、強制された自慰行為を続ける。
「あ、ふ……」
その内に前だけでは物足りなくなってきて、ヅィは自身の胸に片方の手を伸ばした。
服越しというのが何ともじれったいが、幸いに乳首が勃ってきているので、そこに服を擦り付けるようにして、何とか快感を稼ぐ。
そうして、ヅィは己の姿に気が付いた。
着衣のまま、本来なら妖精が使わざるべき前の穴を犯され、排泄の為の尻の穴を今犯され、その上で強制された自慰を必死で達成しようとしている。
相手は人間。妖精よりも下等で、本来ならば触れる事も忌避されるべき、敵。
自分は、仮にも高い地位の妖精。
悠とヅィの関係を知らぬ、幻影界の者が見れば、誰もがこう思う事だろう。
ヅィの姿の、なんと惨めな事か、と。
「あ、あ」
思考が背徳的な快楽に歪む。
自尊心は、その歪んでいく思考を正そうとする。
それ以上を思考してはならぬと。
それ以上、この快楽を認めてはならぬと。
堕ちれば最後、もう戻れぬと。
そんな己自身の声が、ヅィの脳内に響いた。
(どうすれば、よい?)
(分かっておるじゃろうに。わらわよ)
心の声に、心の声が答える。
ヅィは分かっていた。己の心を、フィフニルの妖精としての自尊心を護る為の手段を。
その解は二つだ。
すぐさま彼女の主の、悠の手を振り払い拒絶するか。
あるいは――
「――っ、あ、い、っあああッ!」
快楽の責任の全てを相手に押し付け、理性を一時的に放棄するか、だ。
ヅィは、迷うことなく後者を選択した。
身体が震える。
快楽を自分が得た物でなく、相手から強制的に与えられている物として、それを我慢する事を放棄した身体は、一気に絶頂へと突き抜けた。
今までとは比較にならない快楽が脳を焼き、思考が飛ぶ。
「ひ、あ、ぁ……!」
言葉にならない吐息を漏らしながら、ヅィはひたすらに自身の身体を弄った。
「あ、あっ、あふ、あ、あ、っっ!」
それほど間を置かず、二度目の絶頂に達する。
最早、尻の穴を大きく制圧されている事も、快楽の刺激材料だ。
自慰で得られる通常の快楽と、普通でない尻の穴の圧迫感や重圧が、ギャップとなって更なる快楽に変わる。
「っひ、あっ、あッ、う、ああッ!」
「っ、く、ヅィ……!」
乱れに乱れるヅィの姿を観察していた悠も、不意にその眉を歪めた。
今まではぎちぎちと締め付けてくるだけだった腸壁が、蠕動するように悠の肉棒を刺激し始めたからだ。
それを彼女も慣れてきたのだろうと思い、悠はゆっくりと腰を動かした。
ゆらゆらと浅く動かすだけの運動だが、犯しているのが尻の穴であるだけに、それだけで互いに掛かる負担と衝撃は大きいものだ。
その影響の証拠に、ヅィの嬌声が重く濁り始める。
「う、っは、お、ぐ、あ、おぉ、ひ、うあ……!」
喉の奥から搾り出したような重い声色は、あまり可憐なものではない。
圧迫感に慣れれば普通と遜色のない、艶のある喘ぎになるのだが、今のヅィにそれを求めるのは酷というものだ。
こういう事に精神的にも肉体的にも飲み込みの早いミゥでさえ、まだ喘ぎは重い。
いずれは二人とも、ちゃんと喘げるようにしてやろうと思いながら、悠は徐々に腰の動きを大きなものにしていく。
相手を気遣う動きから、自身を射精に導く動きへと。
「お、あ、あ、あ、あっ、あっ、あッ、あッ、ああッ!」
左右に揺らす動きから、肉棒をヅィの直腸と括約筋で扱く前後の抜き差しに変えると、彼女の喘ぎがより濁音に近いものになる。
その声に僅かな謝罪を送りながら、悠は溜めていた精をヅィの直腸の奥へと放った。
「お、あおぉ……」
悠自身にも分かるほど、いつもより多量の精液がヅィの腸内に流れ込んでいく。
精の脈動が響く度、ヅィの身体も震え、腸が蠕動して肉棒をまた刺激する。
膣と同じように、精の一滴も逃さず胎内に取り込む動きだ。
「っ、ふぅ…… ヅィ、大丈夫か?」
悠は胸に力なく抱かれるヅィにそう問うたが、答えはなかった。
アメジストの瞳は開かれているものの、眠りに落ちる寸前のように細く、光はない。口も力なく護服の裾を引っ掛けているだけで、涎が多量に染みて色合いを暗く変えている。
理性を放棄した為に、快楽で思考が麻痺しているからだ。
「う、あ、あ……」
そんな中、手だけは形のいい乳房を揉み、涎を垂らす淫裂を弄っていた。
時折絶頂には達しているのだろう。小さく身体が震えると同時、一瞬だけ手の動きが止まる。
そんな壊れたかのような姿を見て、悠の興奮はまた度合いを増していく。
妖精炎魔法の効果とは知らず、こんなに変態だっただろうかと思いながら、悠は再び、ヅィの直腸の中で硬さを取り戻しつつある肉棒を動かし始めた。
それからおよそ三度の射精をヅィの腸内でこなし、悠は一息を吐いた。
あまりに注いだ精の量に、ヅィの腹はかなり膨れてしまっている。
精液浣腸、という言葉をふと思い浮かべ、悠は肉棒を抜くべきか抜かざるべきか思案していた。
悠の身体に凭れ掛かったままのヅィの意識は既にない。
二回目の肛内射精までは確かに意識らしいものがあったのを悠は覚えていたが、三回目以降はどうだったか覚えていなかった。
その頃には悠の思考も飛んでいたから無理はないのだが。
「うーん……」
せめてヅィの意識が回復してから、トイレか浴室に行って抜いた方がいいかもしれない。
この世界に来てからまともな食事をしたのが今日初めてのはずだから汚物が流れ出るという事はないだろうが、出来るだけヅィの自尊心を傷付けたくはなかった。
それならば最初から尻穴を犯すなどしなければ良かったのだが、それはそれ。
と、悠がそんな事を考えていると、ヅィが僅かに身じろいだ。
「――お、気付いたか」
「う、む……?」
薄らとヅィの瞼が開き、アメジストの瞳が露になる。
悠が頭を撫でながらヅィの顔を覗き込む。眠たげに開かれたその瞳にはしっかりとした光があり、今だ感じる身体の異物感からか、眉は歪んでいた。
「ヅィ?」
「……」
反応が無かったので、悠は軽く腰を揺すってみた。
ぬち、という肉音と共に、精液塗れの直腸を肉棒が浅く前後する。
途端、劇的な反応があった。
「っぐ!? こ、これッ! もう揺するでない!」
暴れる事こそ無かったものの、ヅィの指が強く悠の腕や太腿を掴んだ。
それに小さな痛みを感じ、悠は腰を止める。
「どうする? ここで抜いていいか?」
「む、ぬ…… 構わぬが、その前に体勢を変えよ」
「どういう風に?」
「主が膝を割って、わらわが上体を倒して…… う、んっ、そう、こうじゃ」
背面座位の形から、悠が膝を割って、その隙間にヅィが手を着き四つん這いになる。それから悠が軽く腰を持ち上げて、ヅィの直腸から肉棒を抜きに掛かる。
「っ、お……!」
ヅィの尻が突き出される。
動き出した肉棒に、ぬぬぬ、と腸壁全体が名残惜しげに絡む。
ヅィの鮮やかな桃色の肛肉が僅かに外に露出し、決して放さぬとばかりに吸い付いてくる様は、非常に扇情的だ。
「ぬ、主…… わらわは、粗相をしては、おらぬよな?」
「どうした?」
「いや、の、感覚が……」
肉棒をゆっくりと抜かれる事に、排泄に似た感覚を覚えたのだろう。
ヅィが顔を赤くし、言葉を尻すぼみにしながらそう聞くと、悠は笑って、大丈夫、と答えた。
ヅィの色素の薄い肌に再び脂汗が浮き始める中、肉棒が彼女の一杯に開かれた菊門から徐々に姿を現していく。
それが遂に亀頭部分に差し掛かり、
「ま、待て」
と、ヅィが慌てた様子で待ったを掛けた。
悠が見守る中、ヅィは大きく二度、深呼吸をし、
「……よいぞ」
と許可を出した。
分かった、と言って、悠が亀頭を抜きに掛かる。
よりヅィの菊門が広がり、カリが姿を現す。
「う、う……!」
ヅィの苦悶と快感の声をバックに、亀頭が抜けて、二人の身体が離れた。
異物の制圧から解き放たれたヅィの菊門は、しかしすぐに閉じる事無く、その綺麗な桃色の臓を覗かせていた。
その直径はよくよく考えれば彼女の二の腕に匹敵する大きさで、ミゥの時と同じ、よく入ったものだと悠は感心する。
何しろ人間換算なら初体験でアナルフィストをしたようなものだ。妖精の柔らかい身体だから成しえるものだろう。
「ヅィ、開きっぱなしだぞ。大丈夫か?」
「う、煩い……! 黙っておれ!」
顔を真っ赤にして悠の心配げな声に言い返したヅィは、恐る恐る菊門に力を込めた。
慎重に、ゆっくりと。腹に力を掛けると中の精液が溢れ出す恐れがある。それだけは何としても避けたかった。
「う、う、う……」
ヅィは凄まじい羞恥を感じながら、ゆっくりと時間を掛けて菊門が閉じる。
ややあって自ら指先で触れ、完全に閉じた事を確認すると、大きく息を吐いてベッドに転がった。
「お疲れ様、ヅィ」
「ほんにの…… 腹が重い。主、一体何回出したのじゃ」
「どこまで覚えてる?」
「前に一回、頂いたのは覚えておる。後ろは、全く覚えておらぬ」
「後ろに四回は出したかな。計五回か……」
「このうつけが」
膨らんだ腹を撫でながら、ヅィが心底呆れたという風に罵倒する。
「そもそもわらわは、このような所に触れてよいと言った覚えは無いぞ」
「男を誘うってのはこういう事だよ。覚えておいた方がいい」
「む……」
「それにヅィも途中からは良さそうだったじゃないか。やっぱり素質があると思う」
「覚えておらぬ覚えておらぬ! 記憶にない!」
「くく」
慌てた様子のヅィの否定に悠が笑うと、その太腿に小さな拳が入った。
「かような屈辱的で惨めな思いをしたのは初めてじゃ! 主、責任を取ってもらうぞ」
「責任って、何だ?」
「っ、それはじゃな……」
「責任を持って…… ヅィが思い切り感じれるようになるまで後ろを開発するとか?」
「――か、開発? ば、馬鹿を言うでないわ! このたわけ!」
ばしばし、と立て続けに小さな拳が悠の太腿に入る。
それに小さな充足を覚えながら、悠はよくヅィがするように喉で笑った。
「先程までの出来事は全て夢じゃ! 寝言を言ってないではよう寝れ!」
「はいはい。いい夢だったよ」
「たわけ!」
最後に蹴りを一発見舞ってやろうと足を振り上げ、しかし腹に負担が来たので慌てて止めるヅィ。
くぅ、と実に腹立たしげな声を上げて、服も脱がずに布団を被った。
それを悠は笑いながら見送って、ふと時計を見遣る。
時刻はそろそろ日を超える。
五人の妖精達も、そろそろ帰ってくるはずだろうと、悠は手前の部屋に出た。
そこには畳に倒れ伏す形でニニルが眠らされており、しかしそうと知らない悠は、彼女の近くにある紙の束を見て、困った子だ、とでも言わんばかりに腰に手を当て、洗面台の棚からバスタオルを持ってきて、彼女に被せた。
そうこうしている間に、部屋の扉が小さくノックされ、
「ご主人様、ピアです。只今戻りました」
と、幾分明るい調子のピアの声が響いた。
悠は応答し、扉に向かう。
最後に奥の部屋の扉を一瞥して、彼は扉を開けて、五人の妖精を迎え入れた。