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Fairy's Day -Pia-

 気だるい微睡みから目覚めて、私――ピア・ウィルトヴィフ・フィフニルはベッドから上体を起こした。
 ひとつ欠伸をして、目を擦る。
「ん……」
 ぼんやりとした視界に入るのは、私の部屋――ではない。
 私が眠っていた巨大なベッドに、その傍にある、こんぴゅーたー、なる機械が載っている巨大な机。その隣にある巨大な本棚にはこれまた巨大な本が幾つも並んでいる。
 部屋に存在する何もかもが巨大で。そんな部屋を私はひとつしか知らない。
 そうだ、昨日は……
 思考の覚醒につれて昨夜のことを思い出すと、頬が、かぁ、と熱くなるのが分かる。
 ご主人様に一杯可愛がってもらって、私はあられもない声を上げ続けて――そこで記憶が途絶えている。
 恐らくは気絶して、自分の部屋に帰ることなくそのまま眠ってしまったのだろう。
「うう……」
 毎度のことではあるけれど、ご主人様の許可もなく同衾してしまうなど、失礼なことをしてしまった。
 きっとお許しになってはくれるだろうけど、こう何度もやってしまっていてはミゥやヅィのことはとても怒れない。
 ご主人様との行為で気絶しないよう訓練か何かをした方がいいのかもしれない。
「はあ…… ?」
 と、ふと周囲を見回すと、今更ながらご主人様の姿がないことに気付いた。
 私が眠っていた場所の隣には確かにご主人様がいた形跡があって、まだ温もりが少しだけ残っている。
 まさか、私ったら寝坊まで――?
 そう思って、即座に遥か上方の壁に掛かっている時計を確認する。時刻は……太い針が六の数字のところにあるから、六時。
 ご主人様にしては少し早すぎる時間だ、と思って、ふと昨日仰っていたことを思い出した。
 明日は朝早くから夏美様と共に用事でお出掛けになる、と。
「ああ……」
 やはり寝坊だ。本来ならご主人様より早く目覚めて、お出掛けになる前に朝食をお作りしないといけないというのに。
 私は肩を落としながら、ベッド脇にある服と下着を身に着ける。
 下腹はまだ少し膨らんでいて、暖かい。ご主人様の精液がまだここにあるのだと思うと、それが愛の証だと思えて嬉しくなる。
 同時に、その分だけ失態のことが胸を締め付けるのだけれど。
「は、あ」
 ベッドを整えて、ご主人様の部屋を出る。
 せめてご主人様がお帰りになられた時には、それまでに終わらせるべき勤めを全て完璧にこなしておこう。


 昼過ぎまでに一通りの勤めを終えた私は、ミゥの部屋を訪れた。
「ミゥ、いますか?」
「はいー?」
 部屋の中からいつもの間延びした返事があって、すぐに扉の鍵が開いた。
 そっと開いた扉の隙間から、まるで寝ぼけ眼のようなとろんとした鳶色の瞳を持った顔が覗く。
「なんですかー?」
「入ってもいいですか?」
「はい、どうぞー?」
 顔が引っ込んで、扉が大きく開く。部屋の中に入ると、テーブルの上をかちゃかちゃと硝子や金属音を立てて片付けているミゥの姿があった。
 いつもの護服の上から白衣を着けている。また何か作っていたのだろうか。
 ふと部屋を見回す。ミゥの部屋は相変わらず一体何処から持ち込んだのか分からない鉢植えで一杯だ。部屋の半分が庭のような状態になっていた妖精郷でのミゥの部屋には及ばないものの、十分にこの子の内装感覚を疑える状態になっている。
 しかも生えている植物も全く見たことのないものばかりだ。付けている花や実の形状から、ひょっとして原型はあれなのだろうかと思うこともあるが、全く確信は持てない。この子お得意の植物操作の妖精炎魔法は、既知の植物を預けて三日後には面影が無くなってしまうほどに強烈だ。
「最近はお料理に使える植物の研究も再開したんですよー? 今度どうですか?」
 振り返れば、至近距離から鳶色の瞳が微笑みの色を持って私を覗き込んでいた。
 思わず一歩引き、ミゥの額を手押しで遠ざける。
「今度ね。満足いく仕上がりになったら私に出してみてください。ご主人様に出す前に」
「はいー」
 くすくす笑いながら一歩引いて、テーブル傍のソファに腰を下ろすミゥ。
 私も倣って、その対面に腰を下ろす。
「ミゥ、折り入って相談があるのですが」
「なんでしょうかー?」
 笑みを消して、小さく頭を傾げるミゥ。
 この子に相談するのは少しばかり不本意ではあるが、この子以外には相談できないことでもある。
「その。ご主人様との行為の最中に気絶しないように出来ないものでしょうか?」
 そう意を決して言った途端、ミゥは一瞬だけ呆気に取られたような顔をして――すぐに満面の微笑みを浮かべた。
「あはは、そうですかー。ピアも意外と欲張りさんですねー」
「違いますっ! 私は、ただ――」
「いえ、身体に正直なのはいいことだと思いますよー? 医学的見地からもそれは間違いないことですし」
「話を最後まで聞きなさい! 私はご主人様にご迷惑をお掛けしないためだけにそうしたいのです!」
「えー。そうなんですかー……」
 声を荒げてまで言うと、非常に残念そうに返してくるミゥ。
 本当にこの子はもう…… 心地よいことに溺れすぎてはいけないと言ったのに、覚えていないのだろうか。
 度が過ぎればご主人様のご迷惑にもなるというのに。
「で。何か方法はありませんか?」
「気絶しないように、ですかー。んー……」
 ミゥは集中するように瞼を閉じて左へ右へと首を傾げ、しばしの後、口を開いた。
「やっぱり、一杯可愛がってもらうのが一番だと思いますよー。要は慣れってことですね」
「それではご主人様に手間をかけてしまうではないですか」
「んー…… じゃあ薬とか使います? ボクが言うのもなんですけど、あんまりお勧めはしません」
「……あなたがお勧めしないものを使う勇気はありませんよ?」
「むう」
 はあ、とひとつ息を吐いて、ううん、と唸り、
「やっぱり慣れるのが一番だと思うんですけど、んー…… ちょっと待ってて下さいね」
 そう言ってミゥはソファを立つと、部屋の隅に置いてある棚を開けた。
「ピアは、ひとりですることってありますか?」
「ひとりで?」
 質問の意味が掴めずにそう返すと、ミゥは棚の中から何かを取り出しつつ、
「指とかをご主人様のおちんちんに見立てて、あそこに入れたりしますか、ってことですよー」
 そんなことを言いながら、その取り出したものを手にテーブルの前へと戻ってきた。
「ええと…… それは?」
 私が尋ねたのは、ミゥが手にして戻ってきたモノについて。
 その真っ黒で棒状のモノは、とてもご主人様の、その、おちんちんに非常に似ていたのだ。
「よく出来てますよね、これ。ご主人様のおちんちんと同じ形なんです。種別上はでぃるどー、とか言うらしいですけど」
 私の視線に気付いたのか、ミゥが小さく笑いながら言う。
「でぃるどー?」
「はい。人間の女性が自分を慰めるときに使う道具だそうです。どんなものかなーと思って、試しにノアに作って貰ったんですよ。色々形があったみたいなんですけど、ノアがご主人様の形で作れるって言うから、それで」
「な、なるほど」
 頷きながら、そのでぃるどーとやらをミゥから受け取る。
 私の腕の肘から先ほどの長さとその二倍弱ぐらいの太さ。少しだけ反っていて、先端近くには独特のくびれがある。材質はよく分からないが、体温よりやや低い程度には温かく、全体的に少し柔らかい。そこがご主人様のおちんちんとは異なる点だろうか。
 そうやって触りながら調べる内に、気付けば私の身体は少しだけ熱くなっていた。特に、あそこが確かな熱を持ち始めているのが分かる。
「これで、慣れればいいと?」
「そうなんですけどー…… ボクは普通にご主人様にして貰った方がいいと思いますよー」
 ミゥにしては、本当に気が進まなさそうな様子でそう言ってくる。
「何かあるんですか?」
「えーとですねー。んー…… なんて言えばいいのか。まあ、使ってみたら分かると思いますよ。差し上げますから」
「いいのですか?」
「ボクが使ってるのは別にありますから。それは予備ですし、必要になったらまたノアに作って貰えばいいですしね」
「そうですか…… では、ありがとうございます」
 ミゥの様子に不可解さを覚えながらも、私はその妙に黒光りする物体へ幾許かの期待を込めつつ素直に受け取った。


 その後、二、三注意点を受けて、私はでぃるどーを自分の部屋へと持ち帰った。
 ベッドに腰掛け、もう一度でぃるどーをじっくりと眺める。
 形状だけを見れば、確かにご主人様のおちんちんと同じ形をしている。今まであそこに指やら何やらと棒状の物を入れてみたことは何度かあったが、これほどまでにご主人様のおちんちんに近い物を入れるのは初めてになる。
「う……」
 期待に鼓動が早くなり、身体がどんどん熱を持っているのが自分でも分かる。
 脳裏を過ぎるのは昨晩のご主人様との行為。舐められて、擦られて、突かれて、出されて。行為の過程をひとつずつ思い出すと同時に、自分でないような自分の声と格好が浮かんできて、どうしようもなく身体の熱が加速する。
 落ち着け、私。
 頭を軽く振って、記憶を追い払う。今からすることは訓練。そう、訓練であって、あれらを思い出して慰めるためにすることではないのだから。
 護服を脱いで、下着もブラとショーツを外す。
「ん……」
 外気に露出した股間部にある縦の筋。幾度とご主人様のおちんちんを受け入れても形が変わらないのは珍しいことなのだそうで、可愛いと言って貰ったことがある、そこ。
 妖精郷にいた頃は時としてここやお尻を露出させた服を纏って外出することもあった。今では外気に触れただけで何故か頬が痛いほどに熱くなって、到底出来そうもないことだが。
「……んっ」
 しばし逡巡して、私はミゥからでぃるどーと一緒に貰ってきた薬液を股間へと塗った。
 薄緑色のそれは肌ぐらいに生暖かく、非常にぬるりとしている。あの子によればこの薬液は肌や粘膜を保護して傷付きにくくしてくれるのだそうだ。
「ん、う…… あっ!」
 縦筋の中まで塗っていると、不意に心地よい感覚が身体を走った。
 思わず縦筋から指を離し、空いた手で口許を押さえてしまった。誰かに聞かれるはずもないことは分かっているのに。
 ゆっくり指を戻す。縦筋の中、いつもご主人様のおちんちんが入っていく穴の浅い部分にも薬液を塗る。
「ん、あ、ふ…… あっ、っ、ふ、あ……」
 勝手に声が漏れて、小さな心地よさが四肢を小刻みに走る。
 ご主人様のおちんちんが入ってきた時には及ばないけれど、この辺りを指で撫でるのも割と気持ちがいい。数分もすれば弱めの突き抜けるような白い感覚とその後の心地よさが得られるのも分かっているけれど、今はそこでしているわけにはいかない。
 私の股間部が薬液と、私自身のそこから溢れてきた液体で十分に濡れたのを確認して、私はでぃるどーを取った。
「っ……」
 妙に黒光りしているでぃるどーのその先端部分を見ているだけで、今まで以上に身体が熱を持つ。
 正直に言って、何度見ても凶悪な物体だ。これをあそこに入れるなんて、嘘だって言われたら今からでも信じそうなぐらいに。
 でも、私は自分の意志でこれを今から入れる――ご主人様のおちんちんと同じように、私のあそこへ。
「た、確か、こちらも濡らして……」
 自分を落ち着けるためにそう呟いて、私は薬液の小瓶に手を伸ばし――ふと止めた。
 もう一度でぃるどーの、その先端部分を見る。妙なくびれがあって、変な形をしていて、でも少しだけ可愛げのあるその部分。
 ……そう、これは訓練だ。これはご主人様のおちんちんの代替なのだから、薬液なんかで濡らしていてはいけない。
 だから私はご主人様の行為の時にいつも自分が進んでやっているように、その黒光りしたでぃるどーの先端を口許へ近付けた。
「ん、う…… ちゅ、れろ、は、ぁ……」
 口付けて、舌を伸ばし、舐める。息を吐き掛けて、その上からまた舐める。
 少しだけ口の中で唾液を溜めて、先端に口付けると同時にそれを垂らしつつ、舌で広げていく。
「ん、はぁ……」
 一度口を離し、私の唾液でてらりと濡れて光沢を増したでぃるどーを見つめる。
 こうして舌で触れてみるとより分かる。これはご主人様のおちんちんの代替でしかないことに。あの胸が高鳴るような熱はなく、柔らかいような硬いような感触もなく、身体が熱くなる独特の匂いと甘い味もしない。
 当然なのだけれど、それがどうしようもなく物足りなく感じる。
「……これは、訓練なのですから」
 口に出して自分に言い聞かせる。物足りなくても仕方がない。そんなことを言っていたら、ミゥの言っていたように単なる欲張りになってしまう。
「んっ……」
 もう一度口付ける。舌を出して、くびれのあるところをなぞるように舐めていく。
 先端全体に唾液を滴らせるだけでも一苦労だ。咥えれば早いのだけど、実を言えば顎が壊れてしまいそうで怖いのだ、あれは。妖精炎魔法で治せはするけれど一瞬とは言え痛いことには変わりがないし、末端器官である腕や足を壊すのとはまた違う恐怖がある。ミゥはよく喉の奥まで咥えているみたいだけど、怖くはないのだろうかと感心すらしてしまう。
 だからこそ今この訓練の時間に慣れておくべきだと思うのだけど、このでぃるどーはご主人様のように気遣ってはくれない。だから余計に怖くて、なかなか踏ん切りが付かない。
 勿論、ご主人様に、ミゥのようにやれ、と言われたら断る自信はないけれど。
「……ん、くぅ」
 先端だけ咥えて、口の中で舌を這わせる。
 行為の時にこっそりとご主人様の様子を観察した結果、どうやらご主人様はこの先端部分を咥えながら舐めるか、くびれているところを舐めていくのが気持ちいいらしい。だからひとまずはこんな感じでいいのではないかと思う。
「んっ、ふ、んっ、ん…… はぁ」
 口を離して、そろそろいいか、とでぃるどーを股間へと向ける。口が疲れてきたのもあるが、そろそろあそこが熱を持ち過ぎていて、我慢の限界だ。
 薬液と、私自身が縦筋から分泌した体液が入り交じったもので滴るほどに濡れたそこへ、でぃるどーの先端を押し付ける。
「んんっ」
 くちりという粘着質な水音と一緒に縦の筋が割れて、でぃるどーの先端が露出した穴に当たった。
「は、あ、っ…… っああ!」
 ひとつ息を吸って、でぃるどーを更に押す。
 ぬぬっとした不思議な手応えとあそこに感じる強烈な感覚と一緒に、でぃるどーの先端が私の中に入ってくる。
 感触だけはご主人様のおちんちんが入ってくる時にとても似ていて――私はたまらず声を上げた。
「は、あ、あ……! ご主人様の、おちんちん、入ってくるうっ……!」
 瞳を閉じて、ご主人様の姿を夢想しながら、でぃるどーを押し込んでいく。
 同時に響いてくる心地よさに従って、私は大きく広がっていくあそこをぎゅうぎゅうと締め付けた。
「あっ、あっあ、ああっ……! うあっ!」
 ごつんと身体の芯に響く重い感触があって、でぃるどーの先端が私の一番奥に当たったのが分かった。
 お腹が破裂しそうな凄まじい圧迫感。大きく開いた足は股間から骨が外れたみたいにまともに動かすことができず、無理に動かそうとすれば痺れるような感覚が返ってくる。下腹は中のでぃるどーに押されて小さく盛り上がっていて、それがなんとも異常だ。見つめているだけで胸の鼓動が著しく早くなる。
「っ、あ、ああ……」
 あそこにでぃるどーを半分突き刺したまま、しばし呆然とベッドの上で浅く荒い呼吸を繰り返す。
 息を吸って吐くだけで頭の奥をじりじりと焼くような心地よさが襲ってくる。
「はっ、はあ、はぁ…… っ、あぁ……!」
 閃光の魔法のように少しだけ視界が白く染まり、ぶるり、と身体が勝手に震えた。
 ご主人様との行為の時に頻繁に起きる感覚。大きいものに比べれば物足りないけれど、それでも十分に心地よい。
「は、あ、は…… う、あ……?」
 ふと、何かが違うと頭が訴えてきた。
 本来ならもっと激しいはずだと。こんなに落ち着いた息を吐いている暇なんてないはずだと。
 そこでようやく私は気付いた。
「っ…… んっ、あ、あ、あ!」
 でぃるどーの余った部分を掴み直して、ゆっくりと引いていく。
 そう。動きだ。冷静に考えれば当然だけど、この物体はご主人様のように動いてはくれない。
 だから、私が自分自身で。
「……あああっ!」
 再び押し込む。最奥に当たって痺れが走り、また視界が白く明滅した。
 また引き抜く。入れる。引き抜く。入れる。
「っ、あ、あっ、あっあ、ひっ! あうっ! あっ!」
 胎内を抉る衝撃に身体が弛緩と緊張を繰り返して息が詰まる。呼吸がどうしようもなく邪魔に思えて、私は戦闘時のように妖精炎魔法に呼吸を押し付けた。
 これで息継ぎに邪魔されることなく、私の喉は衝動のままに絶え間なく声を漏らす。
「あっ、あっあっあっあっ、あ、あっ、はっ、あっ……! あああぁっ!」
 今度は少しだけ大きい波が来た。顕現した翅も一緒にぶるぶると震えて、より心地よい感覚が頭を焼く。
 少しだけ抜いて、また入れてを繰り返しているだけなのに、自分の指なんかよりも凄まじく心地いい。このでぃるどーなら指では至れなかった、ご主人様の行為の時に感じるあの強烈な白を感じれるかもしれない。
「あっ、ああっ、あ、あああっ! ああっ、あ、ああっ、はあああっ!」
 心地よさに頭を焼かれて、衝動のままに声を漏らし、反射的に身体を震わせながらも、私の手は止まらない。
 私はこれ以上を知っているから。これよりも遥かに素晴らしい、あの強烈な白を。
 あれを得て、私は――
「あああっ、ああっ、あ、っあ、ああっ、あっ、あああっ! っ、あ……?」
 でも、なかなかあの白は来ない。
 それ未満の白ならば押し寄せるようにやってくるのに、あの強烈な白だけは一向に訪れる気配がない。
 どうして。
 私は一度手を止めて、自分のあそこが一杯に咥えているでぃるどーに視線を向ける。
 ――いや、本当は分かっているのだ。
 このでぃるどーはよく出来た代替物だと思う。ノアが制作したというだけあって、確かに正確にご主人様のおちんちんを形取ってはいる。
 でも、はっきり言えばそれまでなのだ。所詮は代替物にしか過ぎない。ご主人様のおちんちんとは決して同じではない。
 そのことが分かっているから、私の身体はそれ以上の反応を起こさないのだろう。
「う……」
 それを改めて認識した途端、私は急激に胸が締め付けられるような感覚を得た。
 私は何をやっているのだろうか――そんな虚しさに近い感情が、あっという間に胸の内を満たす。
「ご主人様ぁ……」
 ふと気付けば、私は涙で頬を濡らしていた。
 ご主人様。
 ご主人様。
 私のご主人様。
 今はどこにいるのだろう。何をしているのだろう。
 早く帰ってきて、私を抱き締めて、何でもいいから言葉を聞かせて、そして――
「ご主人様ぁ……!」
 抱いて欲しい。
 甘いキスをしながら、優しく愛撫をして、私がぎゅっと抱き付いたら、それを静かに返してくれて。
 そしておちんちんを私のあそこに挿れて、気遣いながら抽挿を重ねて。
 最後に、あの白を与えてくれると同時に、私の胎内を熱い精液で満たしてくれる。
「う、ぅ……」
 ミゥが言っていたことの真意を知って、私はそのままの格好でさめざめと泣き続けた。


 ひとつ、息を吐く。
 あれから数十分。なんとか心を落ち着かせた私は、何はともあれ身支度を整えることにした。
「んっ……!」
 ぬちり、とでぃるどーを抜く。あれだけ泣いた後であっても相変わらず痺れるような感覚が走るが、もうそれは空虚なものとしか思えなかった。
 私の体液で先端をより黒光りさせるでぃるどーをしばし見つめる。
 結局、訓練にはならなかった。ミゥの言っていたことは正しかったことになる。やっぱりご主人様にお願いする以外にはないのだろうか。
 でぃるどーを拭い布で拭いて、ベッドの傍らにある棚の中へと入れる。もう使う気はあまり起こりそうにないけれど、流石に一度使ってしまったものを返すわけにもいかない。
「はあ……」
 またひとつ息を吐く。
 本当に、私は何をしていたんだろう、という思いが強く伸し掛かる。
 心を落ち着かせた今でさえ、早くご主人様に触れたいという衝動が早鐘のように胸を叩く。
 でも、私の番は昨日終わってしまった。今日はミゥの番になっている。
「……」
 自分の頬を自分で叩いて、頭を振る。
 私ともあろう者が、ミゥと一緒にご主人様にお相手して頂いている光景を想像するなんて。
 ……確かに、魅力的な考えではあるのだけど。
 ごほん、と誰にともなく咳払いをひとつ。
「っ、あっ」
 ベッドから降りると、途端に私は膝を付いてしまった。膝から股関節にかけて全く力が入らない。
 こんなところはご主人様との行為と同じだということが少し腹立たしい。
「っ、もう」
 仕方なく、妖精炎魔法を使って空を飛ぶ。
 目指すは浴室。ご主人様をお出迎えする前に、せめて身体を綺麗にしておかないと――
「――ただいまー」
「!?」
 瞬間、私の耳に届いたご主人様の声に、私は思わずびくりと身体を震わせた。
 時計を見る。時刻は…… もう夕刻前。そんなにも夢中になっていたのだろうか、私は。
 ともあれ――
「――ピア? いないのか?」
「はい、只今!」
 呼ばれたことに咄嗟に返事をし、扉を開けて服を整えながら居間へと向かう。
 居間では丁度大きな荷物をテーブルに置いたご主人様が、入ってきた私を見つめて微笑みを返してくれた。
 思わず抱き着きたくなる衝動を押さえて、私は応える。
「――お帰りなさいませ、ご主人様」

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No title

これはいい一人プレイwww
本編の方も期待してますw

No title

更新お疲れ様です
本編も期待して待ってます^^
プロフィール

fif

Author:fif

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