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フィフニルの妖精達22「痕に残ったもの」

 軽度ではありますが、浣腸や排泄などの汚物表現があります。
 抵抗のない方は閲覧を避けるか、覚悟完了してからお読み下さい。

 描写としてはさらっと二、三行入るだけです。
「んほおおおおおおおおぉぉぉ!」
 とか叫ぶほどひどいものではありません。一応。








「――ふふ。悠、気持ちいいでしょう?」
 そう笑って俺のモノを小さな手で弄ぶのは、橙色の髪を持つ妖精――ニニルだ。
 彼女はベッドの上で俺の両足の間にその幼児に等しい小さな身体を横たえ、俺のモノに顔を寄せている。
 俺はそんな彼女に、ああ、と頷きを返しながら、これほど分かりやすい夢は初めてだ、などと思う。
「まったく、こんなに大きくして…… んっ、扱くのも一苦労ですよ」
 ニニルはその小さな身長に見合った手で、俺のモノを手に余らせながらも懸命に扱いている。完全に勃起したモノに対して掴むのもやっとという程の彼女の掌だが、それを利用して細かで密度の高い快感を与えてくる。なかなかのものだ。
 こんなことを何処で覚えたのか、と口にすることはない。現実の彼女がこんな行為を上手くできるはずがないし、そもそも俺とこんな行為に及ぶこと自体がありえないからだ。
 夢だと断定できれば、別に気になることはない。あるとすれば現実の彼女に少々申し訳なく思うことだろうか。彼女のことだ。俺の夢に出てきたということを知っただけでもその端正な顔と眉を歪めそうなのに、その上あんなことやこんなことを夢の中の彼女が進んでやっていた、ということを知ったら、烈火のごとく怒るに違いない。ひょっとしたら、あんなことやこんなこと、の内容からして分からないかも知れないが。
 まあそんなこんなで、俺はニニルの奉仕を比較的落ち着いて受けていた。
「ん…… だいぶ硬くなってきましたね。そろそろ出ちゃいそうですか?」
「そう、だな」
「仕方ありませんね。私の口の中に出させてあげます」
 本当に仕方なさそうに言って、ニニルは躊躇いなくモノの亀頭に口付けた。舌で先端を舐め、尿道口をくすぐってから、大きく咥える。歯が少しカリに当たったが、気になるほどのものではない。
「ん、ふ、ふ」
 ほぼ限界まで口を開いて俺のモノを咥えたニニルは目を細めて笑うと、ゆっくりと舌を使い出した。同時に頭を沈めて、俺のモノを喉まで入れようとする。少しだけ抵抗があった後、ぐぷ、という少し鈍い音と共に先端が彼女の喉に達したのが分かった。
 以前にミゥにやってもらった喉コキだ。ぬるりとした肉の輪のような締め付けが先端にあって、なかなか気持ちがいいのだが、普通の人間がやったらどう見ても窒息ものだろう。妖精炎を使って呼吸ができるらしい彼女達ならではの技だ。
「う…… いいぞ」
 橙色の髪に包まれた小さな頭を撫でてやると、僅かに動きが早くなる。
 声を出す時の要領で喉を震わせているのか、小刻みではあるが刺激的な振動がある。瞬く間に我慢が出来なくなって、俺はニニルの喉に直接精液をぶち撒けた。
 脈動の度に、びゅるり、と多量の精を吐き出す俺のモノを、ニニルは吐き出そうともせずにしっかりと喉の奥で受け止めている。痙攣するように震える背中の翅は、苦しいのか、それとも気持ちがいいのか。
 そこまでやって、俺はひとつの失態に気付いた。
 ひょっとして、これは夢精になるんじゃないか?
 べったりと濡れた下着の感触が俺の脳裏を過ぎる。この射精が夢の中だけならばいいが、現実でも射精していたらみっともないことこの上ない。第一、寝る前に――
「……」
 そう言えば、寝る前に――何だっただろうか。
 何かをしていたような、そんな気がする。
 ピアやミゥと同衾? いや、そんな程度のことではなかった気がする。
 確か、俺は――


 夢の中でそこまで考えて、俺は目を覚ました。
「う……」
 瞼を開いて部屋の天井が見えると同時、視界が揺れる。凄まじい頭痛のせいだ。
 しかしそんな中、異様な感覚が下半身にあった。
「んっ、ふ、う、んっ……」
 痺れるような緩い快感と、耳に届くくぐもった声。
 俺は恐る恐る上体を起こし、視線を向けた。
「ニニ、ル?」
 俺の股間に顔を寄せ、モノを小さな口の奥深くまで咥え込んでいるのは、橙色の髪の妖精――ニニルだった。
 一瞬目を疑ったのは、彼女が酷い有様だったからだ。
 黒い布で目隠しをされ、手は背中で縛られている。あとは首輪などの拘束具を除けば一糸纏わぬ全裸で、その露になった絹のような肌の所々に精液と思われる白い汚れがある。
 視線を上げて周囲を見回せば、更に酷い状況が広がっていた。
 ピアも、ミゥも、シゥもヅィもネイもノアも――全裸で、肌や髪に精液の汚れを付け、力尽きたようにベッドの上に転がっている。その下腹も一様に膨らみ、まるで妊婦の乱交会場の後のような、凄まじい光景がそこにあった。
「っ―― おい、ニニル! しっかりしろ!」
「ん、けふっ、ふぁ、い……?」
 ともかく、俺のモノを一心不乱に咥えて舌を這わせているニニルを半ば無理やり引き剥がし、目隠しと腕の拘束を取る。
 露になった彼女の鳶色の瞳は胡乱気で、明らかに焦点が合っていない。まさかと思い、彼女の腕を取る。右上腕には、注射痕と思われる点の傷跡が五つもあった。
 予想以上の酷い仕打ちに、俺はしばし絶句した。ニニルの下腹も当然のように膨らんでおり、股間の閉じた縦筋からは血と精液が混じり合ったような液体が跡を残している。更に後ろの門さえも、鮮やかな肉色の直腸が覗けるほどに緩く開きっぱなしの状態だった。
 頭痛が更に激しくなるのを覚えながら、俺はニニルを抱えて浴室に飛び込んだ。シャワーを使って彼女を丁寧に洗った後、熱めの湯を自分の頭から掛ける。ぴりぴりとした痛みを伴う刺激はあったが、視界と思考は急速に澄んでいった。
「あ、う、ぅ……」
 見た目だけは綺麗になったニニルの身体をタオルで優しく拭う。しかし時折上がる弱々しい呻きに、俺の罪悪感は拭いきれなかった。恐らく酔っていたとはいえ、言い訳のできないことをやってしまったのだから。
 浴室を出て、再び洋室に戻る。
 ニニルの身体を俺の寝ていた位置に横たえ、床に脱ぎ散らされている服の中から彼女のものを探す。幸いと言っていいのか、彼女のワンピースと外套は他の六人のものと違って比較的綺麗なままだった。
 服を人形に着せるように彼女に着せる。下着は見当たらなかったが、恐らくニニルは元々着けていないのだろう。それと服の種類がまた幸いして、着せるのに苦労はなかった。
 外見だけは元通りになったニニルを再び抱いて、和室に移動する。ひとまず適当な座布団の上に寝かせ、自分の服を手早く整えてから、彼女の意識の覚醒を試みた。
「ニニル、ニニル……! しっかりしろ!」
「い…… う、ぁ……」
 しかしいくら揺らしても、いくら呼びかけても、ニニルの鳶色の瞳に意思の光は戻らなかった。
 精神崩壊。廃人。そういった単語が脳裏を過ぎる。まさか、そのつもりでミゥは薬を――?
「……っ、くそ!」
 いくらなんでもそこまでしないだろうと思いたかった。
 腰を上げ、みたび洋室に向かう。ミゥを起こして、気付け薬の類があるかどうか聞かなければ。
 扉を開けると、流石に騒がしくしたからかノアが身を起こしていた。
 下腹を大きく膨らませたまま、下着と思われる黒い布を脇に抱え、いつもの黒い服を手に取ったところで、俺が入って来たことに反応して動きを止め、俺を見る。
「――おはよう、ございます」
 一瞬の間を置いて挨拶が来たが、何か違和感を感じる。
 しかし、今は気にしている場合ではない。
「ノア。ニニルの意識が明確に戻らない。ミゥの薬が原因だと思うが、何か対処法――気付け薬とかはないのか?」
 そう口早に問う。しかしノアは相変わらずの無表情で――いや、僅かに目を見開いて、一歩だけ後ろに下がった。
 まるで何かを隠しているか驚いているようなその様子に、俺は彼女に詰め寄る。
「ノア、命令だ。答えろ。いや――答えてくれ」
 数秒の沈黙。
 ややあって、ノアは俺から視線を逸らすことなく、いつもよりややテンポの遅い口調で答えた。
「――ミ、ミゥの薬に関して正確な知識を持っているのはミゥ本人のみ、です。ですが、薬でなくとも単純な気付けならば私にも可能と判断します」
「じゃあ頼む!」
 答えを聞くなり、俺はノアの身体を掴んで和室の側へと引っ張り込んだ。
 座布団の上に力なく横たわり、時折呻きを漏らすだけのニニル。ノアはそれを数秒眺め、手にしていた自分の服から小さな青色の鍵を取り出した。あれは、ニニルの妖精炎を封じている首輪の鍵だ。
「ご主人様、開錠の許可をお願い致します」
「頼む」
「肯定」
 頷いて、ノアは手際よくニニルの首輪を外した。
 一拍置いて、ノアの背中にある黒い翅が闇の粒子のような黒い燐光を放ち始める。
 黒という色をしているのに確かな輝きを持つ不気味な燐光は、ノアの翅から身体を伝って細い腕の周囲を巡り、彼女がその手を翳すニニルの身体の周囲へと流れていく。
「自己修復を行う妖精炎魔法の強制発動を試みます。危険が伴いますので、退避をお願い致します」
 警告に従って二、三歩下がる。
 最後の一歩とほぼ同時に、黒い燐光がニニルの身体に溶け込むようにして流れ込み――電気によって火花が散るような炸裂音と共に橙色の燐光がニニルの身体から弾け出た。
 橙色の燐光は瞬く間にニニルの身体を覆い、時折強く発光しながら彼女の周囲を漂い始めた。
「成功。数分で完全に意識を取り戻すと思われます」
「そう、か」
 思わず安堵の息が漏れる。
 そこでふと、そんな俺をじっと見つめるノアの視線に気付いた。
「……なんだ?」
「いえ、その」
 ノアにしては珍しく、歯切れの悪い応答。
「ご主人様は、正気に戻られましたか?」
 正気に戻ったか。
 不可解な言葉だと思ったのは一瞬だった。目覚めの時の頭痛、中途半端に途切れている記憶。そしてノアの言葉。
 思い当たる点はひとつしかなかった。
「――君達、俺に酒を盛ったな?」
「……肯、定」
 素直な返事に思わず額を押さえ、頭を振る。
「申し訳、ありませんでした。ご主人様がアルコール摂取によって人格が変動する症状をお持ちだとは、判別不可能でしたので」
「……いや、言ってなかった俺も悪かった。君らがお酒好きだと分かった時点で言っておくべきだったな」
 ひとつ息を吐いて、俺の嫌な点を自分で口にする。
「後で皆にも言うが――俺は、過度に酔っ払うと性格が変わるらしい。そうなった場合、何をするか自分でも分からん」
「了解」
「何度か克服できるよう挑戦はしたが、一向に直らなくてな。だから、君らが意図的に酔わせた場合は、何をされても自己責任ということで頼む。出来るならしないで欲しいが、な」
 ノアの身体を眺めながらそう言う。恐らくは精液を注ぎ込まれて膨れた下腹。髪に付着した白っぽい滓。さんざん強姦に近い形で犯してしまったであろうことは明白だ。
「あと俺が酔っ払っている間に交わした約束や契約は無効だ。今回も何か戯けた事を言ったかもしれないが、気にしなくていい」
「了解――では『就寝前に自慰を見せる』『夜が明けたら全裸で散歩』という二つの命令がありましたが、無効とします」
「……是非そうしてくれ」
 一体どんな流れでそんな命令が出たのか。
 昨日に戻って、いい気になっているであろう自分を殴り飛ばしてやりたい気分だ。
 この分ではニニルを含めた他の六人にも変なことを言っていなかったかどうか確認しなければ。
「ひとつ聞くが、酔った俺はどんなことをしていた? 答えたくなかったら答えなくていいが」
「申し訳ありませんが、私も意識が明瞭でない部分がありましたので正確性に欠けます。ご主人様のデジタルカメラを使い不規則的な交代制で撮影をしておりましたので、可能であればそれを参照した方が宜しいかと思われます」
「分かった。君は一旦風呂に行って、それから服を着るんだ」
「了解。何かあればお呼び下さい」
 浴室に向かうノアを見送ってから、俺はまた洋室に足を踏み入れる。また誰か起きているかもと思ったが、今度は誰も起きてはいなかった。
 入口から部屋を見渡す。デジカメは窓際の机の、ミゥのものと思われる緑色の服や下着の上に置いてあるのが見えた。
 床に散乱している服を避けてその机のところまで行き、デジカメを手に取る。
 と、服とデジカメの間からぽとりと落ちるものがあった。
「ん?」
 小さく茶色い、やや長方形の物体。俺の手の平ほどもないこの大きさは、彼女達のものだろう。拾ってみるとその手触りは革のようで、何となくパスケースを思い浮かばせる。
 何気なく中を開くと、そこには意味不明な文字が並ぶカードのようなものと、白黒の絵のようなものがあった。カードの方は木片に文字を刻んだもののようだが、何が書いてあるかはさっぱり分からない。
 次いで白黒の絵の方に視線を移す。最初はよく分からなかったが、じっと数秒眺めて、その正体が分かった。
 これは俺だ。確か、ピア達が現れる数週間前に、夏美さんが俺の親に手紙を出すからと写真を要求してきた時に撮った一枚。その精巧な模写だ。
「……なんでこれが?」
 思わず呟く。この写真は印刷が終わった後、自分のデジカメに自分の写真が入っているのも変な感じがして、すぐに削除したはず。このパスケースのようなものが七人の妖精の中の誰のものであるとしても、彼女達の目に触れる機会はなかったはずだが……
 しばし考えたが答えは出ず、仕方なく本来の目的であるデジカメに俺は視線を戻した。
 電源を付けてモニターを覗き込む。思わず、うわ、という声が出た。
 メモリー容量を限界近くまで使い込んでいる。俺がさほど数を撮らないために画質を最大にしてあると言っても、これは異常な数だ。ライブラリを覗くと、三桁に達しようかという撮影数を示す数値がそこにはあった。
「……」
 ひとつ息を呑み、覚悟を決めてデータを確認する。
 最初に写っていたのは、この部屋の天井と思しき壁と、その半分ほどを覆う黒い影。あちこち触ったら撮れてしまったというやつで、影は指だろう。初めてカメラを扱う者にはよくある失敗だ。
 次に写っていたのは、枠を斜めにはみ出るピアの顔だ。これもカメラの扱いがよく分からぬ内に撮れてしまったものだろう。しかし画面端には、ベッドの上に広がる青い髪と、その向こうに紫の髪を垂らした細く小さい裸身の背中が半分だけ写っている。失敗ではあるが異様に生々しい光景に、俺は思わず唾を飲んだ。
 三枚目は右手側からニニルの半身が写っていた。
 勿論、普通ではない。先程見た時と同様に全裸であり、橙色の髪を振り乱して俺の腰の上で彼女も腰を振っていた。僅かに写る表情は既に正気のそれではなく、開いた口は喘ぎを発しているのがすぐに分かった。
 四枚目。写っているのはニニルとネイだ。先程とは体勢が異なり、ニニルが俺の腹に抱きつき、尻を上げてネイに差し出している。ネイは顔をニニルの尻に近付けて舐めている。
 五枚目。今度はネイが主体だ。彼女が俺の腰に尻餅を付くような形で騎乗位になっている。ニニルは俺の首辺りに腰を掛け、小さな手で俺の額を押さえ付け、前屈みになって喘いでいるのが分かる。察するに、俺に股間を舐められているのだろう。
 そんな調子で写真は続いていく。ヅィが背面座位で、後背位で犯され、ノアとミゥ、シゥの三人で俺のモノに顔を寄せ、ピアが対面座位、騎乗位で喘ぎを上げ、ミゥがそれに続き、ノアとピアが並んで自慰をしている。
 シゥが腕を押さえ付けられながら後背位で犯され、涙目になりながら喘いでいる。それをピアとミゥが眺め、笑っている。
 背面座位で突き上げられるノアの、快感を堪えるような表情を浮かべた顔にヅィが顔を寄せ、恐る恐るといった様子で胸を触っている。
 不意に背景が変わる。浴室でニニルがノアに取り押さえられている。その尻の窄まりにミゥが浣腸器と思しき薄水色の溶液が入った小型の機器を押し付けている。くすんだ黄土色の液体を排泄するニニル。排泄する前の写真とその後の写真では、腕に注射痕がひとつ増えている。続いてミゥもノアに浣腸され、吐瀉物のような濁った液体をニニルの排泄物の上にぶち撒けている写真が続いた。
 そしてお約束のように、その後に続く肛門性交。ピアやシゥ、ヅィが何とも言えぬ表情を浮かべて眺める中で、ミゥが俺に背を預け足を抱えられ、先程汚物を吐き出した菊門を一杯に広げてモノを受け入れていた。その後にニニルが続く。腕の注射痕はまたひとつ増えていた。
 まるで時間がループしているかのような代わる代わるの乱交が小さなモニターの中で続いている。
 俺自身が撮ったのであろう。七人全員がその下腹を膨らませ、足を抱えて縦筋を差し出した格好でベッドの上で横一列に並んでいる写真を最後に、俺はデジカメの電源を落とした。
 これ以上、見る気はしなかった。


「――ほら」
 ニニルを横に、俺はそう促した。
 一拍の間を置いて、俺とニニルの前に広がり並んで座る六人全員が揃って頭を床に着けた。
「申し訳、ありませんでした」
 六人の唱和。俺はそれを聞いて腕組みを解き、横のニニルに向き直った。
 正気を取り戻した彼女。腕の注射痕は消えるように癒え、背中にはV字状の橙色の翅が二対生えている。
 彼女を物理的に縛るものは、もう何もない。
「済まなかった――では済まされないことだ。本当に、申し訳ない」
「いえ…… もう結構です」
 疲労の色濃い表情の中に怒りを灯しながらも、ニニルはそう言ってくれた。
「それで、私は自由なのですね?」
「ああ。こんな仕打ちのお詫びとしては足りないが、もう君を拘束するつもりはない」
「そこの青いのは、それでも追ってくるかも知れませんが」
「なら君に付けていた首輪を、シゥに付けさせる。その上で俺が監視しよう」
「……分かりました」
 ニニルは息を吐いて、ふと視線を逸らす。
 その先にあるのは、彼女の右上腕――注射痕のあった場所だ。
「……また後遺症か何かで苦しむことになるんでしょうね」
「あ、そのー……」
 皮肉のような呟きに答えたのは、誰あろう注射をした本人のミゥだった。
 ニニルはミゥに「これ以上何かあるのか」とでも言いたげな、侮蔑と怒りが綯交ぜになったような視線をぶつける。
 ミゥはその視線に躊躇するように開きかけた口を閉ざしたが、しかし言葉を選ぶように、ゆっくりと告げた。
 それは、ある意味ではとんでもない内容だった。
「今回貴方にー、その、使ったお薬はー……」
「媚薬とか言うものでしょう? 悠から聞きましたよ。低俗な薬ですね」
「いえ、そのー、実はただの花蜜魔法素液でして……」
「……は、い?」
「偽薬効果というものだそうです。思い込みを使った、身体の自発的な変化を促すもので…… 精神病の治療なんかに使えるかな、と」
「た、端的に言いなさい! どういうことなんですか!?」
「ええと、つまり――」
 掴み掛からんといった勢いで問うたニニルに、ミゥは汗を浮かべた曖昧な笑みと共に答えた。
 ――ただの興奮剤で、催淫効果なんかありません。
「ミゥ、それは本当なのか?」
「はい。実験的な意味合いもありましたから、興奮剤と言っても効果が表面的に現れるような程度のものでもありません。せいぜい、ちょっと身体が暖かくなったりするぐらいで…… まさか、あそこまでニニルさんが乱れるとは思ってませんでした」
 そんな言葉に、思わずニニルを見る。
 彼女はその身体を自身で抱き締めるようにして、小さく震えていた。
「お、おい――」
「っ!」
 たっ、とニニルが駆ける。
 向かう先は、洋室の向こう。
 俺が止める間もなく、ニニルは自身の鞄を抱えて洋室の窓を開け放ち、橙色の燐光を残して飛び去っていった。
「……」
 よほど、ショックだったのだろう。
 人間に身体を嬉々として委ねることになった抗いがたい快楽の元凶が、薬ではなく、人間を心底嫌っているはずの自身の身体そのものだったと知らされたのだから。
 ひとつ息を吐く。
「あの、ご主人様……」
 ピアが恐る恐る言葉を掛けてくる。
 俺は胸の奥から湧き上がる様々な感情を全て押し込んで、また息を吐いた。
「……ニニルは去った。彼女がいないのにこれ以上問題を追及しても仕方ない」
「は、はい」
「朝ご飯を食べたら、ここを出てマンションに戻ることになってる。全員、発つ準備をしておくように」
「分かり、ました」


 あれだけのことがあった後ではピアやミゥとはやはり顔を合わせづらく、俺はシゥとネイ、ノアの三人だけを伴って朝食に出た。
 それでも、いつもは俺の前に出るシゥは、今日は一歩引いて俺の後を付いて来る。横に並んでくるネイも同じだ。だから普段はあまり前に出ないノアが代わりとばかりに俺の一歩前を歩いていた。
 誰もが口を開かず、無言でただ通路を歩く。ノアはいつものことであるせいか、そう変化はなさそうに見えるが、シゥやネイは横目でちらと表情を窺うと、本当に申し訳なさそうに顔を伏せている。時折視線が合うと、彼女達の方が視線を逸らしていた。
 そんな居づらそうにしているのに、しかし俺が足を速めると彼女達もしっかりと距離を開けずに付いて来る。
 正直、こういう状況は苦手だった。怒った当人が言うのもなんだが、その怒りが落ち着いてくると、どうにも居たたまれなくなってしまう。いっそ近付くのをあからさまに避けてくれた方が気が楽とも言えた。反省しつつもしっかり一緒に居られると、どうにもこちらが悪者に思えてきてしまう。
 どうしたものか――
「――ゅじん、ご主人?」
「ん? ああ、何だ?」
 そこでふと、シゥに呼ばれていたことに気付いた。
 ここで彼女から話し掛けてくるとは、と思いつつ視線を合わせると、彼女はやや怯えた様子で、
「その、まだ怒ってる……か?」
 と聞いてきた。
「いや…… もう怒ってはないよ」
 怒られた側が怒った側にする質問じゃないな、と思いつつ一瞬迷ってそう答えたが、この応答は失敗した。
 恐らく、まだ俺の表情が硬かったせいだろう。シゥは「そ、そうか」と返事をしたものの、その口は震え、怯えの表情は変わらなかった。感情の変化に聡い故に、過度に感じ取ってしまうのだろう。
 まだ怒っていると思われただろうか。
「……繰り返すが、俺にも悪いところはあった。悪酔いするということを君達に伝えておくべきだった。だから、そんなには怒っちゃいないよ」
「で、でもよ、ご主人は別に悪くは……」
「それでも加害者の一面はある。今回、完全に被害者なのはニニルだけだ。だから謝るなら彼女にして欲しい。まあ彼女からしたら、俺が一方的に悪いのかも知れないが……」
 窓から飛び出して行ってしまったニニル。
 このままの関係で終わってしまうようなことになりたくはない…… 彼女が落ち着いた頃にまた会えればいいのだが。
「まあ、俺が言うのもなんだが、あんまり気落ちしないでくれ。もうああいうことを控えてくれるだけで十分だ。大人しい君なんてらしくないぞ」
「……分かった」
 小さく笑ってそう言うと、シゥはようやく怯えの表情を消して応えてくれた。
「ネイ、君もな」
「は、はい」
 視線を移し、ネイにも笑いかける。
 ふと視線を感じて振り返ると、ノアも俺を見ていて、その表情はいつもの無表情なのに、私にはないのですか? と問うているような気がした。
「ノアもな」
「了解」
 短く答え、頷くノア。
 そんな彼女の様子に奇妙な頼もしさを覚えるから不思議なものだ。
 気付けば、三人は俺と並んで歩いていた。


「――では、世話になった」
「いえ。夏美様に宜しくお願いします」
 代表で山田さんが飯田さんと挨拶を交わすのを横目に、俺達はバスの中へと乗り込んだ。
 位置は行きと同じく最後尾。俺を中心に六人が並ぶ。
 ややあって、山田さんが全員乗り込んでいるのを確認した後、俺達の前の席に座ると同時、バスが動き出した。
 窓の向こうで、緑に囲まれた旅館が山々と共に流れていく。
 僅か一週間の滞在とはいえ色々なことがあったせいか、こうして去ることになると感慨深いものがあった。
「……そう言えば、ニニルはもう幻影界に帰ったんだろうか」
「今の時間ではまだ帰ってはいないと思われます。世界間移動用の転送門の構築はこちらの時間でおよそ三時間を要します。それ以前に、帰還用の信号を受け取る担当者が常駐しているかどうか、ですが」
「担当?」
「肯定。しかし特別心配は必要ないと考えられます。私達が門を通過した際、通過記録が残らないよう転送機構を破壊しておきましたので、その修復及び監督を置いているのは間違いないでしょう。よってニニル・ニーゼスタス・ラーザイルが発信するであろう帰還者用の信号には気付くだろうと判断できます」
 ノアが澱みなく、やや早口で答える。
 そうか、と呟いて、俺は森に包まれた山々に目をやった。そしてあの橙色の髪をした、口の減らない彼女のことを思い出す。
 無事に帰り、そして何事もなければいいのだが。
「……」
 ひとつ息を吐いて、悪いことをしてしまったな、と改めて感じる。
 ニニルにしたこともそうだし、今となってはピア達に怒ったことも俺は後悔しつつあった。
 一時の怒りが霧散すると、今も小さく俯いて口を開かないピアやミゥの姿に罪悪感が沸いてくる。
 ただの友人や赤の他人ならこうはならないのだろうが、彼女達には元気でいて欲しいと思うのは彼女達を好きだからだろうか。
「ピア」
 呼び掛けると、その白い身体が小さく震えた。
「申し訳、ございません」
 絞り出すような声。そんなに俺に怒られたのが苦しいのだろうか。
 それを和らげたいと思って、俺は行きのバスでしたように、彼女を抱き上げて膝の上に置いて軽く抱き締めた。
「あ……」
「もう気にするな。怒った俺が悪かった」
「いえ、ご主人様は……」
 なおも否定しようとしたピアの頭を撫でる。
 それだけで、う、と彼女は呟いて、言葉を止めた。そして俺の身体や腕にその小さな身体を強く押し付け、腕を絡めてくる。
「ご主人様は卑怯です……」
「何が」
「もう、ご主人様に触れられただけで、幸せで一杯で……」
 発情してしまいそうです、と彼女は小声で続けた。
 大袈裟な、と俺は小さく笑って、最後に一際強く抱きしめてピアを手放す。
 そして今度は、俺の隣に座るノアの向こうで、今のやり取りを指を咥え、切なそうな顔で眺めていたミゥに手を伸ばした。
「う、ご主人様ぁ……」
「俺が悪かったから。もう謝らなくていいぞ」
 弱々しい声でそう何かを言おうとする彼女に、俺はピアにした時と同様に抱き締め、頭を撫でた。
「ん、あ……」
 涙目のまま、呆とした表情になって俺の手に撫でられるミゥ。
 撫で続けると、ピア同様に強く身体を押し付けてきて、荒く熱い吐息を俺の胸に吐きかけてくる。
「ご主人様ぁ…… ご主人様ぁ……」
「はいはい」
 うー、と呻きながらご主人様と連呼する彼女を、多少の気恥ずかしさと一緒に背中をぽんぽんと叩く。
 涙だろうか。彼女が顔を押し付けているところが、小さく濡れる感覚があった。
 しばらくそうしていると、荒い息は穏やかなものになって、押し付けられる身体の力は弱くなり、ミゥが泣き疲れて寝入ってしまったのが分かった。
「ピア、頼む」
「本当にもう、この子は……」
 ゆっくりとミゥの身体をピアに譲り渡す。
 離れようとした時にそれを察したのか、俺の服の裾を強く掴まれたが、優しく手を開かせると素直に離してくれた。
「……ほんに、主は優しいの」
「優しいわけじゃない。自分のしでかした事に対して相応に尽くしたいだけだ」
 ヅィの言葉に、そう本音を返す。
 俺の言葉に彼女は珍しく、あの人を喰ったような笑みではなく、単純な優しい笑みを浮かべた。
「そのような心持ちを優しいと言うのじゃよ」
「どうだか。ほら、ヅィも来るか?」
「うむ」
 尊大に頷いて、ヅィは俺の差し伸べた手に身体を委ねた。
 やはり羽毛のように軽い、小さな身体。それを胸元まで抱き寄せて、紫電の髪の上からゆっくりと頭を撫でる。
「ふふ……」
 いつもの笑みではない、優しい笑い。
「心地よいのう」
「そうか」
「うむ。まるで我らが赤子のような扱いじゃが、心地よいならば文句はない」
 言って、ピアやミゥ同様にその小さな身体を押し付けてくるヅィ。
 柔らかい感触を身体の前面に感じていると、ヅィが囁きかけてくる。
「ほんに、すまんかったの。要らぬ事を考えた」
「いや…… 俺も悪かったのかもしれない。君らの気持ちを考えてなかったのは、事実だ」
 要らぬこと、というのは謝罪の時にも聞いた、俺から彼女達の身体を求めるようにしたかった、という話だろう。
「正直な話、君達の求めだけで満足していたというのも事実だ。加えて、君らはその格好だから、変な話だが未だに罪悪感もある」
 この現代社会に生きる普通の人間で、実年齢はどうあれ自分の身長の半分にも満たない彼女たちのような相手を性の対象にするなど、常識的には異常なことだ。
 散々やるだけやっておいて変な話だが、俺はまだその罪悪感が抜けないでいた。白状すると、それが興奮の要素になっているのもまた事実ではあるのだが。
「そのようなこと、気にする必要はないというに」
「君達からすれば、身長がどうとか年齢がどうとかは大した問題じゃないのかもしれないが。この世界ではそうじゃない。そしてこの世界で生きる以上、そのルールには従わなければならない。それぐらいのことは君にも分かるだろう?」
「……分かっておる、と言いたいところじゃが。今の状況では咎める者などおりはせんよ」
「それでも、気にはしていたい」
 そうやや強く言うと、俺の身体に回されたヅィの手の力が強く込められた。
「……分かった。悠がそう言うなら仕方なかろ」
「済まないな」
「くふ、気にする必要はない。そう言う主だからこそ、好きになったのじゃから」
 ヅィの手が俺の身体を離れたかと思うと、俺の顎に添えられた。目と鼻の先に端正で気の強い彼女の顔が来て、
「愛しておるよ、悠」
 との言葉と共に、小さな口付けがあった。
「む」
「ふふ、愛の証明というのは心地よいものじゃな」
 そう少し頬を赤らめて言うヅィのストレートな愛情表現に、俺もやや気恥ずかしさを覚える。
 ――などと思った瞬間、真横から掴み掛かるように俺の首に手が回された。
「――んっ」
 そして頬に柔らかい感触。視線を動かして見れば、目を閉じたシゥの顔がそこにあった。
 それを皮切りに、ネイやノアも俺の首元に近付いてきて、次々と俺の顎や口元に口付けをしてきた。
 彼女達の愛情表現に慌てて応対する俺の耳に、前の座席から山田さんの静かな笑いが聞こえてきたのだった。


 行きと同じく数時間の行程の後、バスは市街へと入っていった。
 よく知っている街並みが窓の向こうを流れていく。窓に顔を寄せて遠くを見回せば、夏美さんのマンションも見える距離だろう。
「そう言えば」
 ふと思い出して、俺は口にした。
「増築とか言ってましたけど、どう変えたんでしょうか」
「よく見ればすぐに分かるだろう。特に君達はな」
 答えてくれたのは前の座席の山田さん。
 夏美さんと非常に仲がいいだけあって、どうやら増築の計画にも一枚噛んでいるような口ぶりだ。
「君達、ですか。またサプライズがどうとかーですか?」
「はは、そう言っていたな。という訳で例によって私の口から詳細は言えない。下手に喋ると、私の命が危うくなるからな」
 笑って言う山田さんに、やはりこの人も夏美さんに苦労させられているのだろうなと思う。
 何かと人を驚かせたりするのが好きな夏美さんのことだ。何か待ち構えていると見て然るべきだろう。
「……ほんに、大丈夫なのじゃろうな」
「まあ、驚かせるのは好きだけど、決して悪意がある訳じゃないから。大丈夫だろう……多分」
 そう話をしている間に、バスは俺が学校へ行く時に毎朝通っていた道路に差し掛かった。
 フロントガラスの向こうに、見覚えのある駐車場が見えてくる。
 やっと帰ってきたか、と旅行から帰ってきた時に決まって浮かぶ思いに身を任せながら、俺は足元の鞄に手を伸ばした。
 バスが駐車場に入っていく。ちらと見えたマンションの玄関には、夏美さんの元気そうな姿が見えた。
 ややあってバスは停車し、降りた俺は一週間ぶりに夏美さんのマンションを見上げ――
「……ん?」
 確かに、その違いにすぐ気付いた。
 俺の部屋があった階の扉が、一つしか見えない。
 まるでその一階上にある夏美さんの部屋と同じ――一階分をまるまる部屋にしたような、そんな状態に見える。
 それに心なしか、マンションが横に長くなっている。そしてその分だけ、横の塀やその向こうの公道、住宅もずれているような……
「気のせいか……?」
「なーにが気のせい?」
 声に気付いて振り向くと、満面笑みの夏美さんがいつの間にか隣に立っていた。
「あ、夏美さん。お久しぶりです」
「一週間じゃお久しぶりって時間じゃないと思うけどねー。ふふ。じゃあこれ、ゆーくんの部屋の新しい鍵だから」
「あ、はい」
 鍵を受け取る。小さな金属音と共に夏美さんの手から俺の手に渡った鍵は以前と同じく通常の鍵に電子ロックを重ねたもので、そう変わりないように見えるが……
「何か変わりました?」
「えーとね。まずエレベータは普通じゃゆーくんの部屋の階まで行かないから」
「え?」
「その鍵を、エレベータの行き先のボタンが並んでるところの下にある蓋の内側の鍵穴に差し込んで左に捻れば、ゆーくんの部屋の階に行くようになるわ」
 後は自分で確かめてね、と言い残すと、夏美さんは軽い足取りで山田さんの所に行ってしまった。
 俺は首を傾げながら、手元の鍵を見遣る。
「……まあ、確かめてみるか。ピア、行こう」
「は、はい」
 六人を引き連れて、一足先にマンションに入る。
 エレベータを呼んで中に入ると、確かにそれまでのエレベータとは違い、俺の部屋がある階の行き先ボタンがなかった。そしてそれらのボタンの下に、見慣れない蓋というか、ハッチが追加されていた。
「……なんでこんな面倒くさい方法に?」
 ぼやきながらハッチを開けると、確かに中には鍵穴があった。夏美さんから受け取った鍵を差し込む。すんなりと鍵は入り、僅かな力を込めると左に回った。
 すると、エレベータが僅かな振動と共に動き出した。階数を表示する部分が更新されていき、ボタンにはない数字の領域に突入していく。
「なんだか上に上がるだけなのに、いやに手間がかかりますね」
「まあ、これはこれで気を使ってくれたのかもな。俺らもご主人も、一応狙われる立場だし」
 ネイとシゥの言葉が終わったと同時、到着音と共にエレベータの扉が開いた。
 扉の向こうには通路があり、すぐ左手に部屋の扉が見えている。
 エレベータを降りて扉の前に立ち、二箇所の鍵穴に鍵を差し込む。左に捻った後に、ぴっ、という電子音が鳴れば開錠の合図だ。
 さて、どう変化しているやら。
 期待と、驚きに対する心構えを持って、俺は扉を引き開けた。
「――お?」
 変化はまず、玄関から始まっていた。
 デザインに変化はないものの、横に広くなっている。同時に三、四人が余裕を持って利用できるぐらいになったようだ。
 以前は小柄な人間が二人同時に座れるかどうかという広さだったから、これはありがたい。
「――あ、広くなっていますね」
「ほぅ、これはよいのう」
 後から入ってきた中で先頭のピアやヅィもすぐに変化に気付いた。
 彼女達からすれば人間一人二人分の広さの拡張でも巨大なものに感じるのだろう。興味深げに玄関を見回している彼女達を尻目に、俺は中へと入った。
 ダイニングはさほど変わりないようだ。リビングも同じ。この二部屋は元々それなりに広いからか、増築の必要はなかったのだろう。
 後は、風呂が広くなっていることに気付いた。以前は中程度のユニットバスに毛が生えたような程度だったのだが、今では一戸建てにあるものよりも広くなっていた。洗面所もそれに比例して拡張されている。恐らく、彼女達全員が入ることを見越してのものだろう。段差を緩和してあるし、浴槽には浅い部分と深い部分が分かれていて、その浅い部分が丁度彼女達六人が並んで座っても余裕があるぐらいの広さだ。
 ということは、と廊下に引き返し、俺の部屋の前に向かう。
 俺の部屋の扉が見えた時点で、すぐ気付いた。扉の下にもうひとつ、小さな扉が作られている。猫を飼っている家がたまにやっている、猫用の出入り口のようなものを想像すると分かりやすい。
 そして、もうひとつ大きな変化があった。俺の部屋の横から新たに通路が延びていて、そこに扉が片側三つずつ、両側合わせて六つ並んでいるのだ。そして通路の突き当りにも、もうひとつ扉がある。扉のデザインは俺の部屋のものと同じ、大きい扉に小さい扉がセットになっている。
 特に考察するまでもない。彼女達の部屋だろう。
「……まさか、最初から分かってたのか?」
 六人の存在が夏美さんに明らかになったのが、増築をするからと旅行に行かされることになった僅か数日前だ。これほどの規模の増改築の計画が、その程度の期間で組めるものだろうか。組めないだろう。本当に夏美さんが六人の新しい住人に気付いたのが旅行の数日前なら。
 脳裏に浮かぶ夏美さんの笑みに、ありがとう、とひとまず返す。いつ彼女達を知ったのか、どうやって一週間でここまで増改築したのか、気になることは多いが詮索の必要はない。第一、夏美さんなら不思議ではない。
「おーい、六人とも。ちょっと来てくれ」
 踵を返し、六人を呼ぶ。
 彼女達の喜ぶ姿が目に浮かぶようで、俺の声は確かに弾んでいた。



 旅行の荷物を片付け、ベッドに腰を下ろした時には既に夕方も終わろうとしていた。
 ひとつ息を吐いて、扉の下、新しく増えた小さな扉を見る。
 予想通りに六人は大喜びの様子で、それまで仮の住まいとしていた倉庫からせっせと荷物を運び出し、今も各自の部屋に詰め込んでいるはずだ。
 それとも、そろそろ終わっただろうか。
「――ご主人様、いらっしゃいますか?」
 と、扉の向こうからピアの声が響いてきた。
 いるよ、と返すと、俺が注視していた小さな扉を開けて、ピアが中に入ってくる。
「部屋はどうだ?」
「あ、はい。私は片付けが終わりました。いい部屋です。夏美様に後ほど感謝の言葉をお伝えしたいと思います」
「そうか。で、何の用事だった?」
 そう聞くと、ピアはまじまじと俺の顔を見つめて、すっと手を差し出した。
「ご主人様、その、これをお受け取り下さい」
 そんな少し歯切れの悪い言葉と共に差し出された小さな掌の上には、彼女には少し大きい鍵があった。
「何の鍵だ?」
「その、私の部屋の鍵です。三つあったもので、ひとつをご主人様にお預けするべきと思いまして」
 そう言われて、思わず彼女の顔と鍵を見比べる。
 折角、自分専用の部屋が出来たというのに、その鍵を預けるとは。
「いや、しかし――」
「お受け取り下さい。ご主人様になら、構いませんので」
 否定しようとしたところを強く押されて、俺は仕方なく鍵を受け取った。
 手の中で部屋の明かりを反射して小さく光る銀色の鍵。全幅の信頼を置いているから、と主張しているのだろうその輝きを、俺はゆっくりと握り締めた。
「分かった。預かろう」
「ありがとうございます。いつでもお越し下さい」
「しかし、鍵か。まあ当然だよな」
 言って、手の中でピアの鍵を転がしていると、ふと彼女も言った。
「ご主人様の部屋も鍵が掛かるようになっているようですよ?」
「え?」
 言われて、俺は自分の部屋の扉に視線を向ける。
 すると確かに、取っ手の上に銀色の鍵穴が見えた。
「ああ、確かにあるな。入ってきた時は気付かなかった。すると鍵は何処だ?」
「私の部屋はベッドの枕元の棚に鍵が置いてありましたが」
 彼女の言葉を受けて、枕元に視線を向ける。
 俺のベッドは枕元に棚などないが、その代わりに横の小さな棚の上に見慣れない鍵束があった。
「……何だ、これ」
 確かに鍵だ。だが、数が尋常ではない。銀のリングに八つほど鍵がぶら下がっている。しかも、どれも同じ鍵だ。
「お、多いですね。それも、全部同じ鍵のようですが」
「……まさか」
 脳裏に再び夏美さんの笑みが浮かぶ。何故こんなところにまで頭が回るのかというか、手を回したのかというか。
 ともかく、俺は八つの鍵からひとつを外し、それをピアに差し出した。
「ほら、お返しだ。君に預けておく」
「え、あ、だ、駄目です! 受け取れません!」
 手を振り、受け取りを拒否するピア。
 しかし俺は彼女の手を取り、半ば無理やりに鍵を握らせる。
「もしも俺が朝起きれなかった時とかは、君に起こしてもらう必要があるからな。そういう意味でも受け取っておいてくれ」
「し、しかし――」
「頼む」
「……分かりました。大切にお預かりしますね」
 そんな慎重な口調とは裏腹に、彼女が喜びを隠しきれていないのが俺にも分かった。
 単なる物の交換ひとつとはいえ、それが部屋の鍵となれば、ここまで特別になるとは。
「――ご主人、入るぞ」
 と、そんな声とほぼ同時に小さい扉が開き、シゥが姿を見せた。
 瞬間、ピアの顔が一転して眉をしかめたものになり、一挙動でシゥに振り返る。
「シゥ! ちゃんとご主人様の返事があってから扉を開けなさい!」
「っち、なんだ居たのかよ…… はいはい、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃねぇか。ご主人の前だぜ?」
 そんな態度に尚も怒声を上げようとするピアを横に通り過ぎて、シゥも俺の前に立った。
 そして数十秒前にピアがそうしたように、手を差し出してくる。その小さな掌には、やはり銀色の鍵があった。
「これ、俺の部屋の鍵だから。三つあったから、ひとつはご主人のものだ」
「いいのか?」
「構わねぇよ。その代わり」
 シゥは俺の手元にある複数個の鍵を、あたかも元々探していたかのように目ざとく見付け、
「それ、ご主人の部屋の鍵だろ? それが欲しい」
「分かった」
 素直に要求に応じ、リングから鍵をひとつ外してシゥにも手渡した。
 彼女はそれを小さく笑みを浮かべて眺め、懐から取り出した、既に鍵がひとつ付いた小さなリングに俺の鍵を付けた。僅かに形状の異なる二つの鍵が触れ合って、小さく金属音を立てる。
「ふふ、じゃあな。邪魔した」
 笑みのままピアを一瞥して、シゥの姿は瞬く間に小さな扉の向こうへと消えた。
「っ、とにもう、あの子は! 申し訳ありませんご主人様、不躾にご主人様の鍵を要求するなど……」
「いや、気にしなくていい。シゥらしくて何よりだ」
「もう…… ではご主人様、私も失礼致しますね。ミゥやネイの様子を見てきます」
「ああ」
 深く一礼して、ピアも小さな扉の向こうに消えていく。
 俺は自分の部屋の鍵二つと引き換えに手に入った、微妙に形状の違う鍵をしばし眺め、それから自分のリングにそれらを付け加えた。
 と、また扉を叩く音。
「誰だ?」
「ノアです。入って宜しいでしょうか、ご主人様」
「ああ」
 返事を返すと、音もなく小さな扉が開き、そこからノアが姿を見せた。
 ベッドの上に俺の姿を見付けると、一直線に音もなく歩いてきて、手を差し出した。
 その小さな掌の上には、やはりひとつの鍵。
「私の部屋の鍵です。ひとつはご主人様がお持ち下さい」
「分かった」
 受け取ると、ノアは一瞬、俺の手元にある鍵束を一瞥し――しかし何も言わず、踵を返して扉へ戻っていく。
「では失礼致します」
 そうして、俺が言葉を発する前にノアはするりと小さな扉の向こうに消えてしまった。
 なんとも彼女らしいと思いつつ、ノアの鍵も鍵束に加える。
 さて、次は誰が来るだろうか――
「……ん?」
 ふと、何か音がすることに気付いた。
 音の方向は、窓。
 何かが控えめに硝子を叩くような、そんな音だ。
 しかしここはマンションの高層階。窓を叩くような者などいようはずがない。
「なんだ?」
 窓に歩み寄り、カーテンに手を掛ける。
 鳥か、何か別の物音か、あるいは夏美さんがまだ何か仕掛けてるのか。
 俺は何があっても驚かないよう色々な意味で覚悟を決め、一気にカーテンを引いた。
 そこにいたのは――
「ニ、ニル?」
 窓の向こう、鉢植えなどを置く小さなスペースに立っていたのは、橙色の髪に黒と白の外套とワンピース。V字型の橙色の翅。そして全力疾走した後のように、顔を赤くし荒い息を吐く妖精――ニニル・ニーゼスタス・ラーザイルだった。
 ともかく窓を開ける。戸が十分に開くのを待って、ニニルは俺の部屋の中に飛び込んできた。
「ちょ、うおっ!?」
 小さな身体が俺の胸板に当たってくる。俺は反射的に彼女を受け止め、そのまま尻餅を付いてしまった。
「っ、はぁ、はぁ、はぁ、っ…… く、はぁ」
「だ、大丈夫か? どうしたんだ?」
 俺の腕の中でニニルは小刻みに震え、強く俺の二の腕を掴み、小さな額を鎖骨に押し付けてくる。
 そんな彼女が小声で何かを呟いた気がして、俺は懸命に耳を寄せた。
「――ってください……」
「なんだって?」
「責任を、取って下さい……!」
「え――ぬあっ!?」
 瞬間、凄まじい力が俺の胸元に掛かり、床へ上体を倒すと共に後頭部をしたたかに打ち付けてしまった。
 痛みを堪えつつ、反射的に閉じてしまった瞼を開く。僅かに揺れる視界には、俺の腹の上にニニルが馬乗りになっている光景があった。
「な、何を――っ!?」
 本能的な危機を感じてニニルを跳ね除けようとしたが、まるで巨重の岩石が乗っているかのように上体が――いや、全身がぴくりとも動かない。
 そこで気付いた。彼女の背中で橙色の燐光を放ち輝く、二対四枚の翅を。
 妖精炎魔法。恐らく、ニニルは自身の筋力の増強と体重コントロールを行っているのだろう。
「待て、待つんだニニル! 責任を取れとは、どういう――」
「言葉通りの、っは、意味ですっ……! こんな、こんな身体になってしまうなんて、あなたの責任なんですからっ……!」
 言葉で時間を稼ぎながら、ニニルはこんなに力が強くない。重くない。 ――そう念じながら彼女を跳ね除けようとする。
 しかし僅かに身体が動いたのは一瞬で、直後に今まで以上の怪力で俺の身体は床に縫い付けられてしまう。
 抵抗出来ているのは確かなのだが、恐らく本気を出して俺を押さえ付けているニニルの妖精炎魔法の威力の前には全く意味を成していないのだ。
「責任…… ぜっったいに取って貰いますからね……! っはぁ、はぁ、っく、もう、我慢できません……!」
 そう言い放って、ニニルは片手で俺の胸を押さえ付けてその小さな身体を俺の腹の上でくるりと反転させた。
 次いで、ジーンズに力が掛かる感覚があった。俺は慌てて声を上げる。
「待て! ニニル、君はそういうことが嫌だったんじゃないのか!?」
「っ…… そうですよっ! そうに決まってるじゃないですかっ! けど、もう身体がおかしくなりそうなんです!」
 顔は見えないが、その叫びは涙声が混じっていた。
 そして思い出す。強力な妖精炎。そして身体の性的な疼き。これと同じことが旅行中にもあった。
 俺の精液を妖精炎に変換しての妖精炎魔法の行使。それによる発情。
 精液が欲しくて堪らなくなったとヅィは言っていた。今のこのニニルの状態は、まさにそれと同じだ。
「あ――」
 そこで俺は、俺の精液を中出しされてから過度に妖精炎を使い過ぎるとどうなってしまうのかの警告をニニルにしていないことに気付いた。
 なんというミスだ。
 新しく追加されたそんな制約に気付かずに、彼女は――
「落ち着け! 責任は取る! 協力もする! だから一旦退いてくれないか!?」
「嫌です! もう、少しも待てません! それに、人間の言うことなんか……信用できません!」
 涙交じりの叫びと共にジーンズの前が剥がされ、下着が下ろされる感覚があった。俺のモノが外気に曝され――次いで小さく柔らかい指が触れてくる。
 そしてニニルは上体を伏せた。同時、モノの先端に生暖かいものが触れる。
「く、あっ……!」
「ん、っ、はぁ、んっ、ちゅ、ふ……!」
 耳に響く、舌と唾液の音。
 まだ柔らかい俺のモノに、ニニルがその小さい舌を這わせているのが分かる。
 亀頭に口付けをし、尿道口を割るように舌を這わせ、そのまま下がってカリを舐める。荒く熱い息が頻繁にモノに掛かり、彼女が異常なほど興奮状態にあるのが分かった。
 それらの刺激で、俺のモノは俺の意思を無視して徐々に勃起していく。
「んっ、ふ、やっと、カタくなって…… 族長達とも、毎晩のようにこうしてるんですか? 写真に撮るぐらいですから、そうなんでしょう!?」
「っ、一体、何を――」
「とぼけないでください! 私には、分かるんですよ……!? 借眼過去視を使えば、フィルムみたいなのを入れ替えたって分かるんですから!」
 そんな追求と同時、モノが強く掴まれる。
 数本のワイヤーで締め付けるような、小さくはない痛みの次に、またモノが生暖かい感覚に包まれた。
 今度は咥えたのだろう。ニニルの声がくぐもり、より強い快感が俺のモノを襲ってくる。
「くぅっ、ニニル……!」
「んっ……!」
 柔らかい頬の内側に亀頭を擦り当てながら、カリを舌で撫で、歯を幹へ痛くない程度に当ててくる。
 より硬くなったのを見て、より口内の奥へとモノを飲み込んでいく。
 そうして強い抵抗と共に、強く締め付けるような感覚がモノの先端を襲うようになった。
「ニニル、無理は――」
 気遣う台詞は要らないとばかりに、俺の言葉の途中でぎちりと先端を締め付けてくる。
 この感覚は、喉の奥だ。ミゥが俺にした、そして俺が今朝の夢で見た喉コキ。
 妖精炎の力で喉を介さずに呼吸が可能な妖精だからこそできる、特殊な技術。
「うっ、く」
 思わず呻きが漏れる。
 昨日初めて性行為を知った者とは思えない技術だ。
 あるいは、長い時間の乱交の中で、俺がそう彼女に覚え込ませたのか。
「っく……!」
 ニニルの舌がモノの幹に絡み、亀頭とカリは硬いが柔らかくもある喉壁に扱かれて、あっという間に勃起の度合いを増していく。
 一度目の限界が近い。
 それを訴えるように彼女の頭に触れると、それを察したかのように彼女は上体を起こした。
「う、ぐあっ!?」
 ニニルが身を起こした瞬間、彼女の喉からモノがずるりと抜け、その衝撃で射精が始まろうとした。
 しかし感じたのは鈍い痛みと、浅い脈動のみ。
 異変を感じて視線を向けると、ニニルは俺の腹の上から腰を上げ――その股の向こうに、痛いほどに勃起した俺のモノの根元を締め上げている彼女の小さな指が見えた。
「くあ、ニニルっ……!」
「私の口の中で出して、どうするんですかっ! 悠、貴方が出すのは、ここでしょう!?」
 言って、ニニルはまた踵を返して俺に正面を向き直ると、自分のそのワンピースのような白い服を片手でたくし上げた。
 薄い生地の向こうには下着などはなく、直接外気に無毛の割れ目を曝していた。ただその無垢な見た目にそぐわず、小さく開き、多量の愛液を滴らせている。
 そこに突き込まれる、男自身を求めるように。
「私のっ、ここを、昨日さんざんやったように、貴方ので貫いてっ…… 精液を注げばいいんです! それだけ、それだけなんですからッ!」
 叫びと共に、ニニルはゆっくりと腰を下ろし始めた。
 俺のモノの先端に彼女の潤い過ぎた縦筋がくちりと触れ、確かに捉える。
 亀頭の先に彼女の小さな肉穴が存在するのがはっきりと分かった。
「っ、はっ、はあっ、っ……! はぁ、はぁ、はぁッ、ふ、は……!」
 耳に響くのは、荒い吐息の音。
 ちらと視線を向けると、ニニルは俺のモノと彼女自身の割れ目が触れ合っている部分に目を剥き凝視していた。過度の興奮によるものか、焦点も合っていないように見える。
 明らかに正常ではない。もはや錯乱に近い状態だ。
 俺はやはり思い直す。こんな状態の彼女と交わってはいけないと。せめて何か別の方法でもう少し落ち着かせてから――

 ――瞬間。彼女の腰が俺の腰へと落ちた。

「ああああああああああああぁぁぁぁぁッ!」
 前触れなく部屋に響き渡った、脳を揺さぶるような叫び。モノに走った、痛みと快楽の混合物。それらによって俺の思考は一瞬以上停止し――同時に、射精していた。
 脈動するモノに伝わる、ぎちりと肉を押し広げ、ぐいと突き上げる感覚。
 驚いたことに、ニニルの胎は俺のモノを先端から根元まで咥え込んでいた。
「っ、はぁっ、はあっ、はあッ……!」
 仰け反りながら叫びを放ったニニルは、やや落ち着いた様子で俺の腹に両手を着き、全力疾走後の余韻のような息を吐く。
 顔には、今までの狂乱の表情ではなく、薄い笑みがそこにあった。
「ふ、ふふ、人間の…… は、ぁ、すご……」
「ニ、ニニル?」
 俺の精を受けたことで、発情がやや落ち着いたのだろうか。
 全部咥え込んだ俺のモノと精液で膨らんだ下腹をいとおしそうに撫でるニニル。ふと、彼女の背後でその翅が更に橙の輝きを増していくのが目に取れた。
 その様はまるで、肥大化した炎がより酸素を求めて肥大化していくようだった。
「ニニル、妖精炎魔法を止めろ! 今の君には危険すぎる!」
 そう警告の叫びを上げると、ニニルは俺の目をその視線にしっかりと捉えて、ゆっくりと口を開いた。
「人間風情が、解ったような口を利かないでください…… 私には、もっと必要なんです。貴方の、精液が」
「それは分かる! だが、君のその発情は、俺の精液を妖精炎に変えているから起きているんだ! 妖精炎魔法を使うのを止めて、ひとまず落ち着け! ちゃんと最後まで責任は取る!」
「……その言葉に、嘘はないでしょうね?」
 俺の言葉がようやく耳に届いたのか、真摯な瞳でそう問うてくるニニル。
「ああ。ミゥが実験と考察の元にそう言っていたから、間違いないだろう。君をそんな身体にしてしまったのは俺の責任だ。だから、君が責任を取れと言うのなら絶対に取る」
「……分かりました」
 ニニルはそう意外にすぐ頷き、俺の身体を押さえ付けている手の力を抜いた。同時に背中の翅から放たれる橙色の輝きが落ち着きを取り戻す。瞬間、全身に掛かっていた負荷のようなものがすっと消え失せた。
 先程の、信用できない、という叫びがまるで嘘のような素直さだった。


 しばし俺とニニルの、身体を落ち着かせるための呼吸音だけが、部屋に静かに響いた。
 そんな中、ふとニニルが口を開く。
「――言っておきますが、貴方を信用した訳ではありませんからね」
「分かった」
 苦笑しながら言って、ひとまず温度の下がった上体を起こす。まずは繋がったままのニニルの身体を退けて、この状況を何とかしなければ、もし次に誰かが入ってきた時に色々とまずいことになる。
 そう思って、俺は彼女の腰に手を掛け、
「何故抜こうとするんですか」
 と、抗議された。
「いや、このままだと――」
「責任を取るのではなかったのですか。責任を取るつもりならこのままで構わないでしょう。貴方は一度私の中に吐き出して満足したかも知れませんが、私はまだ苦しいのですよ」
 口早にそう言われ、俺は仕方なくニニルの背を片腕で抱き、もう片方の手で腰を上げた。
「ん、っ、あっ、もう少し優しく、動きなさい」
「……分かったよ」
 動いた振動で、ニニルが小さい喘ぎと一緒に抗議を吐く。まるでお姫様にあれこれと命令されるお気に入りの従卒のような気分を味わいながら、俺はゆっくりとベッドに腰を下ろした。
 体位的には騎乗位から対面座位になった形になる。少し目線を下げれば、こちらをじっと見上げているニニルの顔が至近にある。何か棘のある視線を感じて、俺はピア達にいつもするように彼女の頭を撫でた。
「ん…… 手馴れてますね。やっぱり、いつもこういうことばっかりしてるんですか?」
「そうだな、割と多い」
「無許可に髪に触るなと、っあ、言われませんでしたか?」
「他の奴にそう怒ったのを見たことはあるが、俺が言われたことはないな、幸いに」
「そう、んっ、ですか」
 時折喘ぎを漏らすニニルと会話を続ける。
 別に俺が腰を揺らしている訳ではない。揺らしているのは彼女の方だ。無意識かどうかは分からないが、まだ身体が満足していないのだろう。
 それにしても、と俺は俺のモノを見事に全て咥え込んでいる彼女の胎に視線を移す。
 少し特殊な体質なのだろうか。モノ全体を暖かく包み締め付ける感覚はひさびさのものだ。ピア達では流石にこうはいかない。後ろの穴なら彼女達でも全て咥え込むことができるが、やはり前でそうしてくれるのとでは感じる快感の性質が違う。
 かなり心地がいい。
「具合がいいな、君の中は」
「黙りなさい。それに、当然です」
 ふん、と鼻を鳴らして、しかし満更でもなさそうにニニルはそう言う。
「男という生き物は狭い穴なら何に突っ込んでも、んんっ、具合がいいのでしょう? では、私達のような体格の相手なら当たり前のことではないですか」
「一概にそう言われると悲しいものがあるが。だが俺が言いたいのはそういうことじゃない。というかニニル、君は妖精の割に色々とそういうことについて知ってるんだな」
「私が何を仕事にしているか、もう忘れたんですか? その辺りの一般的な妖精に比べて多少のことは知っているつもりですよ。と言っても殆どは伝聞や書籍からのもので、っあ、実際に体験したことは少ないですから、自分の知識を過信はしていませんが――少なくとも昨日今日でいくつかのことが正しかったと分かりましたけどね」
「言うな」
「言わせた原因は誰だと思ってるんですか」
 眉を歪ませ、敵意のある視線で俺を見つめるニニル。
 割に、腰を揺する動きは小さくなりながらも止めてはいない。身体は正直、というやつだろうか。
「また変なことを考えたでしょう」
「いや?」
「惚けても無駄ですよ」
「惚けてなんかないって」
「記者の私を誤魔化せると思ったら大間違いです。今は、妙に鋭いな、とか思ったでしょう」
「ないない」
 刺々しい言葉の応酬を交わしながら、どうするかな、と思案する。
 誰かが入ってくる前にニニルを一度外に出させるなり、あるいは隠すなりをするのが一番いいだろう。流石にここまで付いてきたのは頂けない。シゥやミゥだけでなく、流石にピアも怒るだろう。
 しかし俺の精液を受けた以上、彼女の体質が変化したことは全員が重々承知のはずだ。それを説明すれば、彼女がここに居ても構わない理由になるか……?
 いや、しかし――
「また考えて。今度は何ですか」
「いや、どうしたものかと思ってな」
「特に何かを考える必要があるんですか? 責任、取ってくれるんですよね?」
「ああ。それはそうだが」
「じゃあ私、今日から貴方の部屋に住みますから」
「は?」
 思わず呟いた一文字に、ニニルは『何か不満でもあるんですか?』と言いたげな表情で言い放った。
「私の身体をこんなにした以上、当たり前でしょう。他に何か良い考えがあるなら言ってみてください」
「いや、しかし、君は人間が嫌いなんじゃなかったのか。それに幻影界に帰りたいんじゃ――」
「こんな身体で御託を並べている場合ではありませんし、向こうに帰ってからまたはつ――発作があったらどうするんですか? 帰れる訳がないでしょうが。その大きい頭には何が詰まってるんですか?」
「ピアやシゥが何て言うか――」
「全部、貴方が抑えるに決まっているでしょう」
 罵倒を交えた、当然と言えば当然のような反論の後、ニニルは俺の部屋を見回しながら言う。その表情は、まるで万事計画通りに運んだかのような笑み。
「悪くない部屋じゃありませんか。鍵も掛かるようですし、広いし、加えて防音のようですしね。欲を言うならもう少し……というところですが、まあそこはおいおい何とかして貰いましょうか」
「ニニル、悪いが、俺にも出来ることと出来ないことがあるぞ?」
「この国の法と照らし合わせたら、あれらの行為の代償としては安いものでしょう?」
 有無を言わせない、楽と怒の入り混じった笑み。
「繰り返し言いますが、私は怒ってますからね」
 宣言するように言って、
「ああ、間違えて貰っては困りますので一応言っておきますが、行為に関してはどうでも――よくはないですけど、まあいいんです。私は、こんな屈辱的な身体にされたことを怒っているんですよ。何が嬉しくて人間の身体なんかを求めなければならないんですか。冗談だったとしてもきついです」
「君は、どうしてそんなに人間が嫌いなんだ?」
「どうして? それを聞く前に人間の行動を振り返ってみたらどうですか?」
 問い返す彼女の表情は、あからさまな嫌悪。
「他の種族が住まう土地の近くに無理やり入植してきて、その行為故に少しは他の種族に敬意を払うかと思えば、まるで元々そこが自分達の土地だったかのような横暴。そして自然を貪るかのような無茶な開拓をして、そこにある資源を消費し尽くすまで増え――また別の土地に入っていく」
「……」
 俺は人間の一人として、そう言うニニルの言葉を何一つ否定できなかった。
 この世界でも、人間のその性質は変わっていないからだ。
 俺の沈黙を肯定と受け取ったのか、彼女は一つ息を吐いて続けた。
「……ウールズウェイズが以前、人間に対して何と発言していたか、貴方は知っているんですか?」
「ウールズウェイズ? 確か、ミゥの名前だったか」
「そうです」
 脳裏に浮かぶのは、可愛らしい満面の笑みを浮かべるミゥの顔。
 彼女が以前、人間に対してどう言っていたか、か。
「以前というのがいつの話か分からないが、多分知らないな」
「そうですか」
 ニニルは息を吸い、
「『人間なんて、伝染病と同じです。妖精郷に決して入れてはならないモノのひとつですよ』と」
 俺によく聞かせるように、はっきりと言った。
「ですから私は、貴方達に初めて会った時、内心驚きましたよ」
「ミゥも元々は人間嫌いだったのか」
「元々、と言うより、貴方のことが本気で……好き、になるまでは人間の元で生活することに内心うんざりしていたのではないでしょうか。ウールズウェイズに限らず、族長も、ヅィ様も、ヴェイルシアスも、ネイさんも―― あの黒いのはよく分かりませんが、ほぼ全員が差はあれど人間嫌いだったはずです。恐らく、今も」
「それは、分かる」
 俺を好いてくれているからといって、ピア達の人間嫌いがなくなった訳ではない。彼女達が好いているのは人間という種族の俺ではなく、俺という俺個人だ。俺に付属する人間という種族要素は恐らく眼中に入ってはいない。
「ですから、あまり調子に乗らないことですね。悠、貴方が人間というだけで、妖精にとっては嫌いになる要素など数え切れないほどあるのですから」
「分かってる」
 俺が頷くと、ニニルは俺の胸板に顔を埋め、何故か、ふふ、と笑った。
「では、その人間らしくない謙虚さと優しさで、色々と私の言う事を聞いて下さいね。ほら、まずは腰を動かして、私を気持ちよくさせてください。私はまだ満足してないんですから」
「……はいはい」
 俺も苦笑いを浮かべてそう答えると、腰に回された彼女の足で行為を急かすように蹴られた。仕方なく、ゆっくりと腰の前後運動を再開する。羽根のように軽いニニルの身体は、少し突き上げるだけで跳ねるように動く。
「っ、あ、そうそう、いいですよ……っ、ひ、んんっ、あ、悠、もうひとつ、お願いが」
「何だ?」
「あの、っあ、カメラ、私にくれませんか。んっ、新しく買ってくれても、いいですよ?」
「……まあ、それぐらいなら。どうせなら新しいのを買いに行くか。あれはちょっと古いやつだから、今ならもっといいのが手頃な値段で買えるだろう」
「そっ、あっ、そうです、か」
 俺の胴を掴むニニルの手に、強い力が篭る。
 そしていつも俺がピア達にそうするように、彼女達が行為の時にそうしてくるように、その小さな身体を強く押し付けるように抱き付いてくる。
 一杯に口を広げ俺のモノを全部咥え込んだニニルの無垢な割れ目から、粘着質な水音が響き出す。
「んっ、あっ、あ、ひ、っっ……! あ、ひっ、ゆ、悠っ、あ、いっ……!」
「気持ちいいか?」
「はっ、はい……! あ、やっ、もっ、もっと、あ、あっ……!」
 真面目そうで、しかし皮肉げな表情ばかり浮かべていたニニルの顔が快楽に蕩けている。
 デジカメのメモリに残っていたような、あるいは先程、発情して求めてきた時のような正気を失ったものではない。鳶色の瞳にしっかりとした意思の光を灯した、正常なものだ。
 やはりこうでなくてはいけない、などと思いながら、腰の動きを強めていく。
「あっ、あ、おっ、おっき、い、悠のっ、壊れる、私ッ……!」
「っく、大丈夫、か?」
「っは、だっ、大丈夫、大丈夫、ですからっ、絶対、止めちゃっ、駄目ですッ、許しません、からねっ、あ、ひ、っ!」
 大丈夫と言われても、視覚的には俺が腰を強く突き出す度にニニルの下腹は一目で分かるほど盛り上がるのだ。ピア達でも同様の現象は起きるが、ニニルほどには盛り上がらない。
 ないとは思うが、子宮や内臓を痛めてしまわないかと心配になる。
「余計な、心配は、あっ、要りませんっ……! あなたは、っあ、腰だけ、動かしてれば、いいんですッ……!」
「ひどい、言い草だな」
「男とは、そういうものでしょう……!? あ、やっ、胸はっ」
 男について間違った認識を正してやる必要があるなと思いながら、背中側から片手をニニルの乳房に伸ばす。
 大きさはそれなりのほうだ。引き締まった体躯と合わせて考えると、ノアと同レベルぐらいだろうか。流石にミゥやヅィには及ばないが。
 下から持ち上げるように乳房を人差し指と中指で撫で、小指と薬指で肋骨の線に沿うように這わす。
「自分でこういうこと、したことはあるのか?」
「っあ、たまに、ちょっとイライラしたときっ、だけ、っや、あっ、あ、やめッ」
「自慰は経験済みだったか」
「っっ、なに、言わせるんですかッ……! たまにですよっ、ほんとに、っあ、ちょっとだけっ……あッ!? こんなに、気持ちよくなったことなんて、ないです、っあ、あ、あッ!」
「それは、光栄だな…… っく、そろそろ、出していいか?」
 胸の感度は悪くないようだ。乳首を弄り、乳房を、肋骨を撫でる度にぎちりと胎が締まる。ニニルが感じているのがよく分かる証拠だ。
 彼女の背中で小刻みに震える翅も弄くってやろうかと思ったが、今はまだいいだろう。第一、触れたらどうなるのかが分からないと迂闊に触ることも出来ない。
 おいおい開発してやればいいだろう。
「あっ、あ、はいッ、出してっ、出しなさいッ、私の、中にっ!」
 命令を叫ぶと共に、より強く力を込めて俺の二の腕を掴み、腰に回した足を絡ませてくる。
 同時に、今まで以上にぎちぎちとモノを締め付け、暖かく濡れた肉を絡ませてくるニニルの胎。俺はその感触を愛しく思いながら、彼女の最奥にモノの先端をぐりぐりと押し付けながら、込み上げてきたものを撃ち放った。
「っあッ! あ、あッ、あぁぁぁ……!」
 精液を吐き出すモノの脈動に合わせて、ニニルの身体が震える。
 緩やかに膨らんでいく彼女の下腹。何度見ても、思わず唇の端を歪めてしまう光景だ。こんな小さな少女を孕ませているという背徳的な快感がある。
 俺は彼女の頭を撫でながら、そっと長い耳に囁いた。
「満足した?」
 返事は言葉ではなく、俺の胸板により強く小さな額を押し付け、絡んでいる足が腰を踵で蹴飛ばすという嬉しいやら酷いやらのものだった。


 しばし無言のまま、俺とニニルは抱き合っていた。
 彼女が離そうとしないために、俺のモノはまだ彼女の胎に入ったままだ。何に反応しているのか、時折思い出したように、きゅっ、きゅっ、と締め付けてくるのが適度に心地よい。
 ふと思う。ニニルは今、どんな顔をしているのだろうか。
 一度考えると無性に気になって、俺は彼女の背中を抱いている手を戻し、俺の胸板に額を押し付けている彼女の顎に手を添えた。
 ゆっくりと持ち上げる。
「……何ですか?」
 視線が合うなり、そう不機嫌そうに言われた。
 ニニルの表情は、旅行中によく見たしかめっ面だった。ただ、鳶色の瞳の端には涙が浮いているし、頬は上気して赤い。端整な顔なのにそんなだから可愛く感じる。
 そしていつもの癖で、俺はそのままニニルにキスをしようとして、顔を近付けた。
 マシュマロのような柔らかい唇が――
「へぶっ!?」
 瞬間、下から襲ってきた猛烈な衝撃に、俺の頭は大きく吹き飛んだ。
 眩んだ視界に星が回る。凄まじく気持ちが悪い。恐らく顎の下からアッパーを受けたのだろう。
 まともに物を考えられない頭に、ニニルの声が響く。
「何する気ですか。貴方と私はそんな関係じゃないでしょう」
「ぐ……」
 確かにそうだ。正論すぎて反論のしようがない。
「あんまり思い上がったり、調子に乗らないで下さいね。分かるでしょう? 貴方と私の関係は、性暴力の加害者と被害者なんですから。身体は仕方ありませんが、口付けまで許した覚えはありませんよ」
 何故かふふんと得意げに鼻で笑う声。
 と、ようやく満足したのか、ニニルは俺の腰に手を付き絡めていた足を立て、胎から俺のモノを抜きに掛かった。
「っ、あ、あっ、あ、あう、ひ、あっ……!」
 ぬるり、とモノが多量の愛液を纏わりつかせたまま抜け、外気に触れる。
 ぱたたっ、と音を立てて、多量の愛液の雫がニニルの小さく開いた縦筋から零れてベッドに落ちた。
「気持ちよかったか?」
「黙りなさい。さっきもそうでしたが、貴方には雰囲気を思いやるという能がないのですか?」
 抜いた際にちょっとだけ快楽に蕩けた顔をしていたニニルは俺の問いにすぐさま顔をしかめっ面に戻し、そう文句を言ってきた。
 そんな反応に思わず笑う。慣れれば可愛いものだ。
「……それにしても、このお腹は不恰好極まりますね。今朝もそうでしたが、重いし、何をするにも邪魔になりそうです」
「慣れればそんなに邪魔にはならなさそうだったぞ」
「そういうものですか」
 膨らんだ下腹を撫でながら言うニニル。その姿はやはり愛おしい。
 いずれ彼女も――
「……また何か変な想像をしていませんか?」
「いや? 何も?」
「怪しいものですね。 ……まあ、いいでしょう。お腹が空きました。そろそろご飯ですか?」
「あー、そうだな。君の事を説明がてら、ご飯にするか。まずはピアとミゥに話を通してから、だな」
「ふふ、しっかりやってくださいね、悠」
 ニニルのそんな笑みに、これはこれで悪くないか、と思ってしまう俺だった。


 翌日。
「――は?」
「えっと、だからですね、あれは嘘です。ごめんなさい」
 勢いよく頭を下げるミゥ。
 俺はちらと、背後でテレビをネイと一緒になって興味深そうに見ているニニルを一瞥し、すぐミゥに視線を戻した。
「えーっと、つまり、どういうことだ?」
「偽薬効果の思い込みが、って言いましたけど、あれは嘘です。本物の媚薬です。ですから、ニニルさんが我慢できなくなってご主人様のところに来たのは、妖精炎の発情と、それによって引き起こされた媚薬効果の再燃が重なったせいだと思います」
「……なんでそんな嘘を?」
「……えへへ。ちょっと悪戯してみたくなりましてー。それにほら、そうしておいた方がニニルさんがご主人様に身体を許しやすくなるかと――あうっ」
 微妙な笑いを浮かべて説明をするミゥに一発でこぴんをかまして、俺はひとつ息を吐いた。

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ツ、ツンデレだーー!!!
ニニルの可愛いさに全俺が惚れた。

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帽子猫さんとこの鈴音と、ミゥと…某神のみぞのエルシィが重なって見えてしまっ;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
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